2020 Fiscal Year Annual Research Report
中央海嶺における海底マグマ活動が地球環境変動に与える影響に関する研究
Publicly Offered Research
Project Area | Giant reservoirs of heat/water/material : Global environmental changes driven by the Southern Ocean and the Antarctic Ice Sheet |
Project/Area Number |
20H04979
|
Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
藤井 昌和 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (80780486)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 中央海嶺 / 海底マグマ活動 / 海底地形 / 深海磁気異常観測 / 古地磁気強度変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、南大洋およびインド洋の中央海嶺における新たな海域観測研究を通して、地球環境変動における中央海嶺マグマ活動の役割を明らかにする事を目的とする。 初年度に実施を予定していた中央インド洋海嶺での観測について、新型コロナウイルス感染症に伴う対応により断念を余儀なくされ、新たなデータ取得はできなかった。 これを受けて既存データの解析計画を前倒しで進め、追加の対応として解析データの範囲を南東インド洋海嶺海域で拡張した。南半球に分布する中央海嶺(南東インド洋海嶺、大西洋中央海嶺、チリ海嶺)の6海域において、マルチビーム音響測深機と海上磁力計データの解析を進め、各海域・各測線における過去430万年前までの海底地形、海洋底年代を明らかにした。また、南東インド洋海嶺での深海曳航式磁力計観測記録を解析し、古地磁気強度変動データの対比に資する解析結果を得た。 上述の観測および解析に関する成果について、JpGU-AGU Joint Meeting 2020(南極の海と氷床セッション)、The 11th Symposium on Polar Science(南大洋セッション)、海と地球のシンポジウム2020(AORIとJAMSTEC主催)で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度後半に予定していた観測航海は中止となり、中央インド洋海嶺海域での新たな観測記録の取得ができなかった。6月まで新型コロナウイルス感染症に伴う対応を進めていたが、医療機関への短期搬送の保証、乗船前隔離かつ無寄港での長期航海遂行の条件をクリアすることができないため、秋の航海実現を断念せざるを得なかった。 これを受け、初年度はこれまでに得た観測記録の解析を前倒しで進めた。その際、海底地形のデータ解析は当初の予定より拡大して進めた。利用したデータは、チリ海嶺における「白鳳丸」観測(2019年12月)、南東インド洋海嶺における「白鳳丸」観測(2016年1月、2019年2月、2020年2月)・「みらい」観測(2020年1月)・「しらせ」観測(2009年JARE51以降)、大西洋中央海嶺における「白鳳丸」観測(2020年1月)で得られたもの海底地形・海上磁気データである。その結果、各海域・各測線における過去430万年前までの海底地形、海洋底年代を明らかにした。 高分解能な年代指標を得るための取り組みについて、南東インド洋海嶺での深海曳航式磁力計観測記録を解析した。2020年2月に「白鳳丸」観測で得たデータである。その結果、水深約4000mでの高分解能な磁気異常変動が明らかになった。得られた結果では約2900万年前から3300万年前に対応する地磁気年代クロンC11n、C11r、C12n、C12rにおける小さな磁場変動を捉えられ、特にC12nにおける変動はこれまでに知られていない新たな年代指標となりうる大きな発見となった。 高精度年代推定に用いる古地磁気強度変動について既存データを精査し過去430万年間分の変動カーブを検討した。また、比較に資する海水準変動カーブについて、長期変動を再現している変動モデル記録の利用妥当性を検討した。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度のデータ解析を通して得た各海嶺の長基線海底地形変動を用いて、過去430万年間における海底地形の周期性の時間変動を明らかにする。得られた結果と南極アイスコアおよび海底堆積物から得られた古環境記録と対比し、過去100万年前までの氷期-間氷期サイクルとの関連を検証する。さらに、海水準変動の振幅が小さいと推定されている300万年以前の変動を捉えることを通して、海水準変動などの地球表層の外力が地球内部の海底マグマ噴出を規制する要因に成り得るのかについて検証する。上記の解析結果と検証結果をもとに、気候変動における海底マグマ活動の役割に関する研究成果を発表する。 高分解能な年代指標を得るための取り組みについて、深海曳航式磁力計観測記録の解析を通して昨年度に得たC12nにおける変動について、同時代にマグマ噴出したエチオピアLimo Limaセクションの溶岩の古地磁気記録と対比する。合わせて、同時代をカバーする堆積物が採取されているIODP掘削孔U1331,U1332,U1333から得られた、相対古地磁気強度変動データも対比に利用する。他海域の海上磁気異常との対比についても、特に高速拡大海嶺との比較を進める。これらの検証結果を踏まえて、地磁気年代クロンC11n、C11r、C12n、C12rにおける古地磁気変動と年代指標としての役割に関する研究成果を発表する。
|