2020 Fiscal Year Annual Research Report
4つのsalienceの計算論的統合から見た妄想・幻視・幻聴のネットワーク病態
Publicly Offered Research
Project Area | Brain information dynamics underlying multi-area interconnectivity and parallel processing |
Project/Area Number |
20H05064
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮田 淳 京都大学, 医学研究科, 講師 (90549099)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | salience / 海馬 / 中脳 / 線条体 / salience network / 視覚ネットワーク / 聴覚ネットワーク / 感覚運動ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
妄想(誤った信念)と幻覚(対象を伴わない知覚。主に幻視と幻聴)は、統合失調症の主要症状である。平成29年度の統合失調症による入院者数は約15万人で、全疾患による入院者数約131万人に占める割合は最多であり、社会的損失は甚大である。 本研究課題では、妄想・幻視・幻聴とsalienceに関わる4つのシステム(海馬ー中脳ー線条体、前部帯状回ー島皮質、視覚ネットワーク、聴覚ネットワーク)との関係の共通性・特異性から明らかにすることを目的とする。 まず、発症ハイリスク期、発症早期、慢性期の統合失調症患者を対象として、安静時の機能的MRIを実施した。これにより、1)ハイリスク期および発病早期では海馬ー中脳ー線条体システムおよび前部帯状回ー島皮質システム(salienceネットワーク)の結合性が低下していること(staging marker)、2)前者のシステムは妄想・幻覚の強さ及び服薬と関連すること(state marker)、および3)後者のシステムの結合性低下はハイリスク期から慢性期にかけて弱まりながらも存在すること(trait marker)を明らかにした(論文投稿中)。 また、構造的MRI、拡散MRI、および安静時の機能的MRIを組み合わせることで、妄想形成と関わる「jumping to conclusions」と呼ばれる認知的バイアスの強さが、salienceに関わるネットワークの構造的・機能的結合性と関係していることを明らかにした(論文投稿中)。 また、知覚的なsalienceの強さと視覚ネットワーク・感覚運動ネットワーク間の機能的結合性の強さとの関係、および認知的なsalienceの強さと中脳ー線条体間の機能的結合性の強さとの関係が、統合失調症患者と健常者とでは異なることを明らかにした(論文準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
妄想・幻視・幻聴という症状のモダリティと、salienceに関わる4つの異なるネットワークとの間の共通性・特異性明らかにし、かつtrait, staging, state markerとしての性質を明らかにしたことは、当初の計画よりも進展している。 一方、コロナウイルス蔓延の影響もあり、認知課題を用いた機能的MRIの進捗が遅れているため、トータルとしては概ね予定通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
認知課題を用いた機能的MRIの実施と、それに対する計算論モデルの適用により、異なるモダリティのsalienceシステム間の計算論的な理解を進める。
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Research Products
(4 results)