2020 Fiscal Year Annual Research Report
環境応答型の分子分布を持つ水圏機能ペプチド材料の創製
Publicly Offered Research
Project Area | Aquatic Functional Materials: Creation of New Materials Science for Environment-Friendly and Active Functions |
Project/Area Number |
20H05229
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
若林 里衣 九州大学, 工学研究院, 助教 (60595148)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ペプチド / 自己組織化 / 環境応答材料 / 水圏機能 / 細胞接着 |
Outline of Annual Research Achievements |
両親媒性ペプチド (PA) は、水圏環境下で自発的に組織化し機能する、水圏機能材料の一つである。本研究は、複数のPAペアから多機能化超分子ファイバー材料を調製し、環境に応答して分子分布と機能性を変化させることで、環境応答型の水圏機能材料の創製を目指している。基盤となるPA分子には、互いに独立して組織化するPAペアを用いる。これに対し、双方の分子に親和性を持つドーパント分子を導入した際に分子分布が変化し、それに応じた機能性を示すのではないかと着想し、本研究提案を行った。 2020年度は、互いに非相溶性を示す複数種類の疎水性置換基を持つPAペアの分子設計を行った。まず、これらのPA分子同士が互いに混ざり合わず独立した self-sorted 超分子ファイバーを形成することを確認した。その際、疎水性置換基のサイズや超分子ファイバー調製時の温度条件がself-sorted 超分子ファイバーの生成に重要であることを見出した。また、これらのペアに対しドーパント分子を導入すると、self-sorted超分子ファイバーから混合ファイバーまで、ドーパント分子の導入割合に応じた相分離・共集合挙動を示すことが確認された。 これらの材料としての機能性評価のため、細胞接着性ペプチド配列、RGDをPAのC末端に導入した。RGD含有PAの導入割合の最適化ならびに分布の制御を行い、超分子ファイバーに対する繊維芽細胞の接着性を評価した。 以上の結果に関し、学術集会やシンポジウムでの研究成果発表を9件(内2件は招待・依頼講演)行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基盤となる分子は、互いに相溶せず相分離するPA分子ペアである。2020年度は、この分子ペアの設計と相分離挙動の評価にまず注力した。その結果、安定して相分離を示すPAペアを見出すことができた。さらに、双方の疎水性置換基との相溶性を示すドーパント分子を導入すると、相分離から共集合に転じることも確認できた。これらの結果は、共焦点レーザー顕微鏡による直接観察により確認したものである。 さらに、これらの相分離・共集合を制御できる超分子ファイバーの機能性評価のため、細胞接着性ペプチド配列を末端に導入したPAの合成を行い、これを超分子ファイバー中に導入した。その導入割合に応じた細胞接着性の差異を評価するにまで至った。 以上のように、本研究を進める上で最も基盤となる分子設計を確立し、研究提案の概念実証を行うための実験・研究を着実に進めており、これらの結果に関して学術集会やシンポジウムで多数研究発表を行うことができた。そのため、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、細胞接着性ペプチドを導入したPAを用いて、PA分子分布の異なる複数種類の超分子ファイバー、すなわち self-sortedファイバーおよび共集合超分子ファイバーを形成させる。超分子ファイバー中のPAの分子分布の違いにより、細胞接着性に差異が現れるかを検証する。また、ドーパント分子に事後修飾を施すことで、環境に応答した分子分布の変化および細胞接着性の変化が生じるかを確認する。さらに、領域内連携により、相分離および共集合の起こる超分子ファイバーの形成過程のシミュレーションやPAの分子構造に依存した超分子ファイバーの水和状態の解析等を進めていく。
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Research Products
(9 results)