2020 Fiscal Year Annual Research Report
過剰鉄によるフェロトーシス惹起メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Integrated Biometal Science: Research to Explore Dynamics of Metals in Cellular System |
Project/Area Number |
20H05505
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 宏明 京都大学, 医学研究科, 助教 (90738006)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フェロトーシス / 鉄 / 細胞死 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄によって惹起される新規細胞死フェロトーシスは、がんや虚血性疾患との関連から精力的に解析されている。 しかし、フェロ(鉄)+トーシス(死)という名称とは相反して、鉄の視点からのフェロトーシスのメカニズム解明は全く進んでいない。これまでに研究代表者は、培地への鉄添加によってフェロトーシス様の細胞死がおこる細胞をCRISPR/Cas9のゲノム編集技術を用いて作成し、その細胞を用いて全ゲノムを対象としたCRISPRスクリーニングを実施した。これまでに鉄添加によって惹起される細胞死を促進する因子に加え抑制因子を多数同定しており、その機能解析をすすめている。特に、フェロトーシス促進因子では、新規の鉄還元酵素を同定し、二価鉄の生成によって細胞膜を構成するリン脂質が過酸化され、フェロトーシスが惹起されるメカニズムを明らかにし、現在そのメカニズムをさらに解析中である。また抑制因子においては、野生型細胞においても、その因子を欠損させると鉄依存的な細胞死がみられることを見出した。メカニズムとして、脂質の過酸化を抑制することを見出しているが、今後、精製タンパク質を用いた実験により詳細な機能解析を進めていく予定である。 またスクリーニング結果の中で、新規のヘム制御システムを同定した。これまで細胞内ヘム動態はブラックボックスであったが、今回同定した因子により一気に解析が進む可能性があり非常にエポックの大きい研究になる可能性を秘めている。今後は新規ヘム制御系によるヘム動態の制御、またフェロトーシスとの関連を明らかにする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでにCRISPRスクリーニングで多数の鉄依存性フェロトーシス制御因子を同定している。上位の制御因子については2次スクリーニングを行い、フェロトーシスへの関与、また鉄代謝への影響などを指標に解析を行った。促進因子の中で上位のヒット因子であった新規の鉄還元酵素に着目して解析を行っている。これまでに鉄を二価に還元することで、脂質を過酸化することを見出しており、より詳細なメカニズム解明をすすめている。また抑制因子については、これまであまり報告のない因子をフェロトーシス抑制因子として同定しており、その因子を欠損させると野生型の細胞においても鉄依存性細胞死が顕著に亢進すること、またリン脂質が過酸化されることを見出している。上記、フェロトーシス促進、抑制因子の解析を通して鉄依存性のフェロトーシスのメカニズム解明ができると考えており、今年度中の論文化を目指している。また、スクリーニングの中で新規のヘム制御系と考えられる因子を同定している。細胞内のヘム代謝系に関してはあまり解明が進んでいないところも多く、非常にエポックの大きい研究につながる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに同定しているフェロトーシス促進因子、抑制因子についてより詳細な解析をすすめていく。促進因子に関してはタンパク質の結晶構造解析により詳細な機能解析を行うとともに、欠損マウスを作成したのでフェロトーシス促進因子の生理的意義の解析をすすめる。また抑制因子に関しては、精製タンパク質を用いた試験管内反応系を構築し、より詳細なメカニズム解明を進めるとともに、阻害剤の開発も進める予定である。同定した抑制因子の欠損マウスは、正常に発生するが、ROSなどの負荷に弱いことが報告されいるので、上記阻害剤は大きな副作用はなく、がん細胞などにフェロトーシスを誘導できる抗がん剤になる可能性がある。 また新規に同定したヘム制御タンパク質に関しては、タンパク質を精製しヘムとの関連を解析するとともに、欠損細胞を作成し、ヘム代謝への影響、またフェロトーシスへの関連を探索する予定である。
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