2009 Fiscal Year Annual Research Report
SARSコロナウイルスの細胞侵入機構と病原性発現に関する研究
Publicly Offered Research
Project Area | Matrix of Infection Phenomena |
Project/Area Number |
21022050
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Research Institution | Nippon Veterinary and Life Science University |
Principal Investigator |
田口 文広 Nippon Veterinary and Life Science University, 獣医学部, 准教授 (30107429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松山 州徳 国立感染症研究所, 主任研究員 (90373399)
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Keywords | SARSコロナウイルス / プロテアーゼ / TMPRSS2 / S蛋白 / 細胞融合 / 細胞侵入機構 |
Research Abstract |
SARSコロナウイルス(SARS-CoV)は細胞に感染する時、宿主細胞のプロテアーゼを利用することが知られている。SARS-CoVのスパイク(S)蛋白は細胞表面のレセプター(ACE2)に結合後、トリプシンやエンドソーム内にある「カテプシン」などのプロテアーゼによって解裂されて活性化し、細胞膜とウイルスエンベロープを融合させることが報告されてきた。今回我々は、細胞膜貫通型プロテアーゼであるTMPRSS2がS蛋白を活性化する可能性を検討した。 TMPRSS2を発現させた細胞(VERO-TMPRSS2)にSARS-CoVのS蛋白を発現させると細胞融合が見られ、プロテアーゼ阻害剤のロイペプチンによりこの細胞融合は抑制された。更に、この細胞へのウイルス侵入は、バフィロマイシンやESTといったエンドソーム/カテプシン阻害薬では阻止できず、ヘプタッドリピートペプチド(HRP:細胞表面で活性化されるS蛋白のみを阻止する)により阻止できることから、TMPRSS2は細胞表面でS蛋白を活性化していると考えられる。一方、このVERO-TMPRSS2で作られたS蛋白は解裂されておらず、感染価にも変化はみられなかった。これらのことから、TMPRSS2は細胞に侵入するウイルスのSを活性化することは出来るが、この細胞で生産放出されるウイルスのS蛋白には影響を及ぼさないと考えられる。我々はTMPRSS2のS蛋白に対する空間的な方向がS蛋白の活性化に影響していると考え、S蛋白を発現させた緑色蛍光細胞とオレンジ蛍光細胞の双方にそれぞれTMPRSS2を発現させ、細胞融合の有無を調べることにより、TMPRSS2とS蛋白の方向関係を調べた。その結果、TMPRSS2は同じ細胞に発現しているS蛋白を活性化することはできないが、向かい合った反対側の細胞に発現したS蛋白を活性化できることがわかった。つまり、TMPRSS2は細胞に侵入しようとするウイルスのS蛋白に対しては方向が反対なので働くが、出て行くウイルスでは方向が同じなので働かないことを示唆している。この結果は、SARS-CoVの肺での強い病原性にTMPRSS2が関与する可能性を示唆している。
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Research Products
(11 results)