2009 Fiscal Year Annual Research Report
重い電子系の高圧・低温におけるフェルミ端電子構造の赤外分光研究
Publicly Offered Research
Project Area | Emergence of Heavy Electrons and Their Ordering |
Project/Area Number |
21102512
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡村 英一 Kobe University, 理学研究科, 准教授 (00273756)
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Keywords | 高圧力 / 赤外分光 / 電子構造 / 重い電子系 / 超伝導 |
Research Abstract |
Ce化合物などの重い電子物質では、一般に外部圧力によってf電子の局在から遍歴状態への移行が誘起される。その際に現れる超伝導、非フェルミ液体的性質などを理解するため、フェルミ端近傍の電子構造をエネルギー分解で調べることが強く望まれる。本研究ではこの問題に対する新たなアプローチとして、高圧かつ低温において重い電子物質の赤外分光を行い、得られた光学伝導度に基づいて圧力下の電子構造を直接観測することを目的とした。測定対象は高圧で超伝導を示す物質CeRhIn_5, SrFe_2As_2、および金属絶縁体(MI)転移が高圧で抑制されるPrRu_4P_<12>を取り上げた。高圧低温での赤外分光実験は大型放射光施設SPring-8の赤外ビームラインで、高輝度な放射光を光源として、またダイヤモンドアンビルセルを高圧発生装置として行った。初年度は主に遠赤外領域の測定を行った結果、各物質で高圧下でのスペクトルの温度変化が常圧でのそれに比べて顕著な変化をすることを見いだした。まずCeRhIn_5であるが、この物質は常圧では反強磁性体であり、伝導電子とf電子の混成は弱いことを反映して、光学伝導度の温度変化は非常に小さい。しかし超伝導が現れる2.5GPaの高圧下ではかなり明快な温度変化を示した。またSrFe_2As_2も常圧で反強磁性体であり、ネール温度以下で光学伝導度に明快な擬ギャップが観測されていた。しかし高圧印加と共にこの擬ギャップが減少していくことがわかった。さらにPrRu_4P_<12>ではMI転移によるスペクトルの温度変化が、10GPaと14GPaの間で急激に変化することを見いだした。これら結果を受け、2年目では中赤外領域の測定を追加して光学伝導度を導出することにより、電子構造に関する議論を行う予定である。
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Research Products
(4 results)