2010 Fiscal Year Annual Research Report
高圧下蛍光分光システムによる蛋白質の構造的揺らぎの定量的解析
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science of Fluctuations toward Biological Functions |
Project/Area Number |
21107501
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
石森 浩一郎 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (20192487)
|
Keywords | 構造的揺らぎ / 高圧分光法 / ヘム蛋白質 / FRET / 線圧縮率 |
Research Abstract |
本年度の主な研究成果は以下のとおりである. FRETを用いた蛋白質における局所的線圧縮率の算出とその意義の検討 マッコウクジラミオグロビン(Mb)において,そのTrp14をPheに置換し,Eヘリックス末端近くのLys63をCysに置換することで,蛍光団であるAEDANSを63位に結合させたAEDANS修飾変異ミオグロビン,W14F/L63C-AEDNAS Mbを作成することに成功した.このAEDANS修飾変異ミオグロビンにおけるTrp14と,Cys63に結合したAEDANSとの間のFRET効率の圧力依存性について,昨年度に作成した高圧下蛍光分光システムを用いて検討した.この変異Mbは,295nmの励起光で発光する340nm付近のTrp残基に由来する蛍光強度が減少し,逆にAEDANS由来の460nm付近の蛍光を発するようになったことから,Trp14と63位に結合したAEDANSとの間にFRETが起こっていることが示された.これらの蛍光団間のFRET効率は,加圧に従い0.769(50気圧)から0.802(1500気圧)に上昇し,このことはTrp14とCys63位のAEDANS間の距離が加圧により短縮したことを示している.さらにこのFRET効率の定量的解析から,これら2点間の線圧縮率を求めると,3.1×10^<-10>m^2N^<-1>と見積られた.この値は,Mbの等温圧縮率から求めた3×10^<-11>m^2N^<-1>よりも大きく,また,ヘムと蛋白質表面に結合した金属錯体間の電子移動反応の圧力依存性から求めた3×10^<-11>~2×10^<-10>m^2N^<-1>に比べても大きいことから,Trp14とLys63の間の構造揺らぎは大きいと考えられた.このLys63が位置しているEヘリックスはミオグロビンにおける酸素結合部位を形成しており,ヘムに結合した酸素分子と水素結合しているHis64もその隣のアミノ酸残基として位置していることを考慮すると,本研究から得られた結果は,酸素分子が効率よくヘム鉄に結合するために,Eヘリックスの構造的な揺らぎは大きいことを意味している.
|
Research Products
(4 results)