2021 Fiscal Year Annual Research Report
磁気乱流フィラメントの進化:分子雲コア形成と星質量を決めるコア重力崩壊の初期条件
Publicly Offered Research
Project Area | A Paradigm Shift by a New Integrated Theory of Star Formation: Exploring the Expanding Frontier of Habitable Planetary Systems in Our Galaxy |
Project/Area Number |
21H00045
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
古屋 玲 徳島大学, 教養教育院, 准教授 (60455201)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 偏波観測 / 星間磁場 / 星間ダスト / フィラメント状分子雲 / 分子雲コア |
Outline of Annual Research Achievements |
報告者らが国際協力で立ち上げたサブミリ波偏波計POL-2で取得したデータを利用して研究をさらに進めた. 本研究の狙いのひとつが 「直線偏波観測は星間磁場を捉えているのか?」の検証であるが, 最終年度では輻射場が非常に強いオリオン・ブライトバー周辺の観測を2022年秋に完了した.
2022年度に完了させた研究のひとつでは, おうし座分子雲にある分子雲コア L1521 F に着目した. 偏波観測の結果, 850 μmでトレースされる磁場は, 大局的に南北方向であるが, 450 μm ではこれに直交する構造をもつことがわかった. 詳細な解析の結果, 我々が捉えた1000 AUスケールの構造は擬似円盤(pseudo-disk)であること, この系では自己重力によるガスの落下運動が支配的であることがわかった. 研究協力者による, 理論シミュレーションの多数の結果と比較することで, 1000 AUスケールの現在の磁場の平均的な向きは, 系が重力収縮を始めるまえに存在した大局磁場は, ほぼ85度捻られていたと推定された.
国際協力パートナーが進める研究にも, 解析のアイデアを提案するかたちで参画した. そのうち, 主要なものとして大質量星形成領域Monocerous R2における波長850 μmでの偏波観測の結果がある. この研究からは, (1) 約1pcの領域全体は, ハブ・フィラメント構造を示し, 磁場は風車を彷彿させる渦巻き形状であった. (2) 磁場に沿って9本のフィラメントが同定され, それらの多くは磁気的亞臨界にあると推定される.(3) 求められた質量磁束比の不定性を考慮に入れても, 外周部は乱流圧よりも磁場で支えられており, 中心部は重力崩壊していることがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度において, オリオン座分子雲Aの積分記号型フィラメント(Integral shaped filamentary cloud; 以下ISF)の偏波撮像を完結することを目指したが, マウナケア山頂の天候に恵まれず, 当初計画の約60%の積分時間を達成するにとどまった(R4年3月). そこで施設使用料として執行予定であった当該研究費を繰り越した. 繰り越し時点の画像の到達感度では, ISF南部の分子雲コアのうち, 柱密度の高い分子雲コア最深部のみでの偏波検出に留まっていた.
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】で述べた, オリオン座分子雲Aの積分記号型フィラメント(Integral shaped filamentary cloud; 以下ISF)の直線偏波撮像を完結することがR4年4月段階の最大のタスクであった. 実際, 【研究実績の概要】で述べたように、R4年秋にオリオン・ブライトバー周辺の観測を完了し, オリオン座分子雲Aの積分記号型フィラメントの偏波撮像を完結している. 2023年5月現在, 波長850 μmデータについては較正処理を終えており, 科学的解析に着手している.
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Research Products
(13 results)