2021 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子と自己組織化にもとづく花粉エキシンの立体構造の構築機構とその力学的特性
Publicly Offered Research
Project Area | Elucidation of the strategies of mechanical optimization in plants toward the establishment of the bases for sustainable structure system |
Project/Area Number |
21H00365
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石黒 澄衛 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (50260039)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 花粉 / 細胞壁 / シロイヌナズナ / ユリ / FIB-SEM / エキシン / アラビノガラクタンタンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
花粉エキシンのイメージを走査型電子顕微鏡などで平面的に撮影するのは容易であるが、それでは複雑な立体構造であるエキシンの全体像を捉えたとは言えない。そこで、収束イオンビーム-走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)法を用いて高分解能の断層画像を撮影し、その画像から立体構造イメージを再構築する方法を試みた。シロイヌナズナの蕾を固定し、四酸化オスミウム、酢酸ウラン、クエン酸鉛などで染色し、樹脂包埋してFIB-SEM観察を行った。葯に入ったままの小胞子をこの方法で観察したところ、断層撮影には成功したものの、特に発達初期の小胞子では画像のコントラストが弱く、明瞭な立体画像を構築することができなかった。そこで、葯から小胞子を取り出した上で用いる方法を試してみることにした。モデル実験としてシロイヌナズナよりも花粉のサイズが大きいシンテッポウユリを用いることにし、減数分裂の数日後の小胞子を葯から取り出して固定、染色(四酸化オスミウム、タンニン酸、四酸化オスミウムの順)、樹脂包埋を行って観察した。その結果、非常に明瞭なエキシンの立体画像を構築することができるようになった。さらにその画像を用いて3Dプリンタによる模型の製作を行なった。 TPFLAと名付けたシロイヌナズナのアラビノガラクタンタンパク質(AGP)遺伝子について、ゲノム編集による多重変異体の作出を進め、五重変異体まで作ることに成功した。成熟花粉が変形する表現型や小胞子表面のAGP量が減少する表現型が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FIB-SEMによるエキシンの観察でS/N比を上げる方法を確立することができ、一つの目標としていた模型製作に到達できたことで、最終年度にエキシンの発達過程を追った詳細な観察を行う下地ができた。さらに、効率的なゲノム編集の方法を確立することでTPFLA多重変異体の作出が順調に進み、最終年度に目的の多重変異体を得ることができる見込みとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
FIB-SEMを用い、エキシンがどのように立体構築されていくのかが明瞭にわかるような3Dイメージングを行う。エキシンの形態が異常になる突然変異体についても同様の解析を行い、異常形態が何に起因して生じるのかを詳細に解析する。花粉形成の初期段階で働くTAP35タンパク質やTPFLAタンパク質については、GFPレポーターを利用したイメージングと特異抗体等を利用した生化学的解析を併用し、その機能を明らかにすることを目指して研究を行う。
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