2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the factors controlling genome modality in the determination of inactive X chromosome
Publicly Offered Research
Project Area | Genome modality: understanding physical properties of the genome |
Project/Area Number |
21H05753
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
落合 博 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 准教授 (60640753)
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Project Period (FY) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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Keywords | ライブイメージング / X染色体不活性化 / CRISPR / 転写 / 高次ゲノム構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
メスの哺乳類細胞では、発生初期に2本のX染色体のうちの1本がランダムに不活性化される。XistおよびTsixと呼ばれる長鎖非コードRNAは、マウスにおけるランダムX染色体不活性化において中心的役割を果たす。XistとTsixはそれぞれ不活性化または活性化X染色体上に強く発現し、相互抑制の結果、不活性化X染色体が決定される。この過程にはX染色体のペアリングや高次ゲノム構造形成が関与することが示唆されているが、Xist/Tsixの発現優位性を含む不活性化X染色体決定機構は明らかになっていない。本研究では、分化誘導過程でX染色体不活性化を誘導できるメスマウス胚性幹(ES)細胞を用い、Tsix/Xistの転写活性とゲノム領域のライブイメージングを行うことで、X染色体ペアリングや高次ゲノム構造等のDNAの構造的及び物理的側面と転写などのDNAの情報的側面を経時的に定量し、不活性化X染色体決定におけるゲノムモダリティ制御要因の解明を目指す。 本年度はTsix/Xistの転写活性とゲノム領域のライブイメージングが可能なメスマウスES細胞の樹立に取り組み、分化誘導を通してライブイメージングが可能な細胞の樹立に成功した。また、オスの野生型マウスES細胞、野生型メスマウスES細胞、そして樹立したマウスES細胞を分化誘導し、Xist/Tsix発現動態を一分子RNA-FISHを利用して確認した。現在データ取得が完了した段階であり、今後これらのデータを解析してXist/Tisx発現動態に影響が無いことを確認する予定である。また、Tsix/Xist転写に加えて別の遺伝子領域の可視化に対応できるdCas9-SNAPtag発現細胞株を樹立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は以下の研究の実施を計画していた。 研究計画1: X染色体不活性化前後におけるXist /Tsixの転写動態の定量。予備実験で、Xist/Tsix領域にTetO/MS2/PP7リピートを両対立遺伝子にノックインしたメスマウスES細胞株を樹立している。また、この細胞株にTetR-GFP、MCP-RFP、PCP-HaloTagを発現させることで、それぞれの輝点が見えることを確認している。研究計画1では、分化誘導前から分化過程におけるライブイメージングにより、XistおよびTsixの転写動態を定量し、Xist転写が優性になる前の転写動態になんらかの特徴が認められるかどうかを解析する。また、X染色体ペアリングとXist/Tsix発現動態との相関も解析する。 研究計画2: 高次ゲノム構造動態とXist /Tsix発現動態の同時定量。研究課題2では、活性化X染色体において転写活性化状態のTsixと相互作用するLinx領域(図1)に対応するsgRNAを設計、dCas9-SNAPtagでこの領域を染色する。Xist/Tsix領域との距離、およびXist (またはTsix)の転写動態を同時に定量することにより、転写と高次ゲノム構造形成のどちらが先だっているかを確認する。 研究計画1については、ライブイメージング可能な細胞を樹立したが、Xist/Tsix発現動態をライブイメージングで定量することは困難なため、RNA-FISHでの検証に切り替え、現在データ解析中である。研究計画2については、Xist/Tsix転写の可視化に加えて他の遺伝子領域の可視化が可能なdCas9-SNAPtag発現細胞株を樹立したが、研究計画1のライブイメージング結果が出てから進める必要があるため、完了していない。
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Strategy for Future Research Activity |
上記研究計画1を完了し、研究計画2を進める予定である。その後、以下の研究を計画している。 研究計画3: 人為的な高次ゲノム構造形成がXist /Tsix発現へ与える影響。樹立したメスマウスES細胞は異なる系統のマウスをかけ合わせて得られたハイブリッドマウスES細胞に由来する。そのため、それぞれの染色体には系統特異的な多型が含まれている。dCas9はPAM配列(dCas9のDNA結合に必要な特定の配列)近傍の認識配列(シード領域)に1塩基ミスマッチがあることで、結合しにくくなることがわかっている(Jones et al., Nat Biotechnol, 2020)。そこで、CRIPSR-GOシステム(Wang et al., Cell, 2018)を利用して、TetRおよびdCas9をアブシジン酸依存的に結合させるタンパク質を融合し、特定系統由来のX染色体上のLinx領域に対応するsgRNAを発現させることで、アレル特異的に高次ゲノム構造を制御する。これにより、先立つ高次ゲノム構造形成がXist/Tsix発現へ与える影響を明らかにする。
研究計画4: 人為的なXist /Tsix転写制御が高次ゲノム構造へ与える影響。本研究計画では、分化誘導過程でCRISPRiシステム(Alerasool et al., Nat Methods, 2020)を利用してXistまたはTsixの転写を抑制することにより、Linx-Tsix間距離への影響を調べる。研究計画3と合わせることで、転写と高次ゲノム構造形成のいずれが先立つのか、解明する。
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Research Products
(8 results)