2010 Fiscal Year Annual Research Report
酸化物磁性体へテロ界面での量子物性の創出
Publicly Offered Research
Project Area | Nano Materials Science for Atomic Scale Modification |
Project/Area Number |
22015011
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤田 晃司 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50314240)
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Keywords | 金属酸化物 / 薄膜 / ヘテロ界面 / 磁性 / 誘電性 |
Research Abstract |
チタン酸ユウロピウム(EuTiO_3)は反強磁性常誘電体であるが、外部からのわずかな摂動により「強磁性強誘電相」に変換できる可能性がある。平成22年度は,EuTiO_3薄膜-基板間での格子不整合界面の作製と物性制御を目指して研究を遂行し,以下の成果を得た。 1.パルスレーザー堆積(PLD)法を用いて,SrTiO_3(格子不整合:0.0%),LaAlO_3(格子不整合:-2.9%),DyScO_3(格子不整合+1.0%)基板上にEuTiO_3の単結晶薄膜を作製した。いずれの基板を用いた場合でも薄膜はステップテラス構造をもち,原子レベルで平坦であることが確認された。面内方向の薄膜の格子定数は,SrTiO_3基板ではバルクとほぼ同じ値、LaAlO_3基板では0.3%の圧縮DyScO_3基板では1.0%の伸張が確認され、用いる基板によって薄膜に印加されるひずみを系統的に制御できることがわかった。 2.格子伸張したEuTiO_3薄膜では強磁性的挙動が確認された。バルクと比べた際の膨張率が大きいほど強大な磁化が得られ,体積膨張によってスピンの強磁性相互作用が安定化されるという理論的予言を実証した。また,各薄膜のEuイオンあたりの飽和磁化は6.4~6.8μ_B程度であり、90%以上のEuイオンが2価の状態で存在することが確認された。キャパシタンス測定の結果から,薄膜化による誘電率の大幅な上昇が確認され強誘電相転移の可能性が示唆された。 これに関連した成果として,EuTiO_3結晶が5.3Kにおいて反強磁性転移を示すのに対して,非晶質EuTiO_3が5.5Kにおいて強磁性転移を示すことを見出した。EuTiO_3のワイス温度が+3.8Kであるのに対して,非晶質EuTiO_3のワイス温度は+8.0Kであり,非晶質化によりEuTiO_3の磁気的相互作用が強くなるという興味深い現象が観察された。
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