2010 Fiscal Year Annual Research Report
DNA上の極性を有したスライディングとカップルした塩基変換酵素反応の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative understanding of biological processes mediated by transient macromolecular complexes; New technology for visualizing physiologically metastable states. |
Project/Area Number |
22121517
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
片平 正人 京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (70211844)
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Keywords | APOBEC3G / 抗HIV / デアミネーション / リアルタイムモニタリング / NMR / DNA / 立体構造 |
Research Abstract |
ヒトのAPOBEC3G(以下A3G)タンパク質は、HIVのマイナス鎖DNAに作用して、シトシンをデアミネーションしてウラシルに変換する酵素である。これによりHIVのゲノム情報は破壊され、A3Gは抗HIV活性を有する。我々はNMRシグナルを用いる事で、A3Gによるデアミネーション反応をリアルタイムでモニタリングする事に世界で初めて成功した。本研究ではデアミネーションのホットスポット(CCC)を、鎖の5'端近くと3'端近くに計2つ配した1本鎖DNAを調製し、A3Gを作用させ上記の手法で反応を追跡した。仮にA3GがDNA鎖上を3'→5'の方向性を持ってスライディングしながらデアミネーションを行う場合、3'端近くのホットスポットにおけるデアミネーションを終えたA3Gは、スライディングして5'端近くのホットスポットに到達し、そこで引き続きデアミネーションを行う。この場合確率論的に、5'端近くのホットスポットにおけるデアミネーションの方が、他方より早く進行するはずである。実際にそのようになっている事が、今回実験によって検証できた。次に2つのホットスポットの間のDNAに相補的なDNAを加えて2本鎖を形成させ、スライディングができない状況を作る。この際には2つのホットスポットの反応性には差がなくなる事が予想されるが、実際にそのようになる事が実験的に確認できた。これらからA3Gによるデアミネーションは、3'→5'の極性を有したスライディングとカップルして生じている事が示された。また残基特異的に13C安定同位体標識を施したDNAも調製し、これを用いた反応のモニタリングも行った。その結果同位体標識をすれば、100残基程度のDNA鎖(分子量~35000)中におけるデアミネーションも比較的容易に追跡できる事が示された。13C安定同位体標識によってもたらされるこのような高い空間分解能を生かせば、過渡的複合体の挙動が明らかになり、HIVのゲノムDNAの広い範囲に渡ってA3Gが効率的に変異を導入するメカニズムに迫れると考えられる。
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