2022 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical study on functional activations of proteins by a hybrid free energy geometry optimization method
Publicly Offered Research
Project Area | Non-equilibrium-state molecular movies and their applications |
Project/Area Number |
22H04748
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
林 重彦 京都大学, 理学研究科, 教授 (70402758)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 分子シミュレーション / ハイブリッド法 / イクオリン / 発光タンパク質 / 光受容体輸送体 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くのタンパク質では、化学反応活性部位における精緻な酵素反応や光化学反応が、遠位のリガンド・タンパク質結合部位と大規模なタンパク質構造変化を通して相関することにより、顕著な分子機能が発現する。 本研究では、まずQM/MM RWFE-SCF 法を用いて、本研究領域の中津らによりTR-SFX 実験が進められている、イクオリン発光タンパク質の発光制御機構の解明を行った。イクオリンの resting 状態の付加酸素分子からなる過酸化水素基のプロトン化状態が異なる二つの状態に対して、QM/MMRWFE-SCF 自由エネルギー構造最適化計算を得た。その結果、プロトン化している過酸化水素基は近傍のチロシンやヒスチジン側鎖と強く相互作用しており結晶構造を良く再現する一方、過酸化水素基が脱プロトン化した状態の構造は不安定であり、過酸化水素基はプロトン化していることが示唆された。更に、得られた resting 状態からヒスチジン側鎖へのプロトン移動反応の反応自由エネルギーを QM/MM RWFE-SCF 及び Bennett acceptance ratio (BAR)自由エネルギー法を用いて計算したところ、非常に大きな吸熱反応となり、発光反応活性化には過酸化水素基の脱プロトン化が必要であることから、resting 状態において発光反応活性化が強く抑制されていることが分かった。 また、NpHR のアニオンポンプ光活性化状態の構造モデリングを QM/MM RWFE-SCF 法を用いて行った。その結果、塩素イオンチャネル内の2 個のカルボン酸側鎖の間で過渡的にプロトン移動が起こると仮定した状態では、レチナールプロトン化シッフ塩基の構造変化にもかかわらず、塩素イオンのプロトン化シッフ塩基近傍への強い結合が観測され、イオン輸送中間状態の良いモデルを得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イクオリンの研究に関しては、QM/MM RWFE-SCF 法によるプロトン化状態を含めた resting 状態の高精度な構造モデルの構築の成功は、今後のカルシウムイオン結合による発光反応活性化、及び発光反応経路探索の礎を築くものであり、順調に進捗している。更に、プロトン移動の自由エネルギー計算によるエナジェティクス解析により、resting 状態による発光反応活性化の抑制機構を明らかにすることに成功しており、新規な知見が得られている。 また、NpHR に関しては、明らかになった中間状態の構造モデルは、レチナールプロトン化シッフ塩基の光異性化による構造変化にも関わらず、塩素イオンがプロトン化シッフ塩基近傍に結合しており、これまでのシミュレーションでは得られていなかった新規な構造モデルである。イオンの能動輸送には、塩素イオンのプロトン化シッフ塩基近傍への結合が必須であり、新規モデルは今後の解析の道を開いている。
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Strategy for Future Research Activity |
イクオリンの発光反応活性化に関する研究では、これまでの計算で得られた自由エネルギー構造最適化されたresting 状態に、カルシウムイオンを結合し複数の長時間の MD 計算を行うことにより、発光反応活性化をもたらすタンパク質構造変化のシミュレーションを行う。得られたタンパク質構造変化状態に対して QM/MM RWFESCF 自由エネルギー構造最適化計算を用いて、ジオキセタノン中間状態生成反応の反応経路解析を行う。ジオキセタノン中間状態生成に伴うプロトン移動経路を同定するために、近傍のヒスチジン側鎖や発光基分子であるセレンテラジン自身などの考えられるプロトン化状態に対して QM/MM RWFE-SCF 自由エネルギー構造最適化計算を行い、BAR 自由エネルギー計算を行うことにより、ジオキセタノン中間状態のモデリングを行う。更に、QM/MM RWFE-SCF自由エネルギー構造最適化計算、及び BAR 自由エネルギー計算を用いて中間状態間の反応経路の自由エネルギープロファイルを求める。また、QM/MM RWFE-SCF 自由エネルギー構造最適化法を用いて、ジオキセタノン中間状態からの二酸化炭素脱離反応の反応経路の探索も行う。 また、NpHR のアニオンポンプ光活性化に関する研究では、チャネル内の 2 個のカルボン酸側鎖のプロトン化状態が異なる状態、及び 2 個の塩素イオンの配位位置が異なる状態の組み合わせに対して MD 計算及び QM/MM RWFE-SCF 構造最適化計算を行うことにより、詳細な塩素イオン輸送の中間状態モデルを得る。更に、それらの塩素イオン移動の自由エネルギープロファイルを、アンブレラポテンシャルを用いた自由エネルギー計算で求めることにより、イオン輸送のエナジェティクスを明らかにする。
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Research Products
(15 results)