2022 Fiscal Year Annual Research Report
微生物易培養化を目指した表現型不均一性の理解と制御
Publicly Offered Research
Project Area | Post-Koch Ecology: The next-era microbial ecology that elucidates the super-terrestrial organism system |
Project/Area Number |
22H04890
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
一色 理乃 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (00875388)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アンモニア酸化菌 / 難培養性 / シングルセルレベル / ばらつき / 表現型の不均一性 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球上の微生物の多くは未培養であり、継続して培養し続けることが難しい微生物も多い。難培養微生物を培養していると、常に同じ増殖速度をコントロールし続けることが難しい場合がある。本研究では、この原因は微生物が持つ表現型の多様性にあると考えた。従来,微生物は単一菌種の細胞の集団であれば全ての細胞が同様の性質を持つと考えられてきた。しかし,近年,個々の細胞ごとに遺伝子発現は多様で,その結果,表現型も細胞ごとに不均一であることが明らかにされてきている。難培養微生物では,増殖速度が細胞ごとに多様であり,その結果,培養液を構成する細胞の性質が度々異なるためにコントロールが難しいのではないか。実際に、先行研究より、難培養微生物であるアンモニア酸化細菌においてシングルセルレベルで増殖速度を測定すると、増殖をしない細胞から増殖速度の速い細胞まで、多様な細胞が存在することが明らかにされた。本研究では、このような増殖のランダム性こそが難培養微生物の増殖戦略を示す重要な挙動であると考えた。そこで、アンモニア酸化細菌を用いて、等しく培養したはずの培養液が異なる増殖速度を示すことを定量した。さらに、経験的に培養の難しさが異なるアンモニア酸化細菌3種において、ばらつきを比較し、培養の成功率と増殖速度のばらつきの関係を明らかにした。その結果、これまでの培養の困難さや培養による研究の乏しさが著しいほど、増殖速度のばらつきが大きいことが明らかになった。したがって、培養のしやすさと増殖速度のばらつきには繋がりがあると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って、不均一性の大きさと培養の難しさの紐付けについて検討した。具体的には、経験的に培養のしやすさが異なるアンモニア酸化細菌3種について増殖速度の不均一性を比較した。増殖速度の不均一性はフラスコレベルで、培養のできないフラスコの割合を算出することで、3株の培養のしやすさについて数値化した。この成果を、査読つき論文として国際誌に投稿し、掲載が決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、不均一性を制御し、培養しやすい微生物を増やしたい。そのためには、不均一性の大きな集団中で、増殖速度の速い細胞の割合を高めることが効果的である。そこで、増殖速度の速い細胞がどのような性質を持つかメカニズムを理解する必要がある。これまでの経験的に、1細胞ごとの増殖速度と凝集性に関わりがあることがみられている。そこで、凝集する細胞と凝集しない細胞における増殖速度の違いを明らかにするとともに、アンモニア酸化菌の凝集性を司る遺伝子クラスターを明らかにする。
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