2011 Fiscal Year Annual Research Report
メリステム制御の基盤を支える植物幹細胞の不等分裂の分子機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Plant regulatory systems that control developmental interactions between meristems and lateral organs |
Project/Area Number |
23012002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤田 知道 北海道大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (50322631)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日渡 祐二 基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 助教 (10373193)
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Keywords | 植物 / 幹細胞 / 不等分裂 / メリステム / ヒメツリガネゴケ |
Research Abstract |
植物の形態形成はメリステムにある幹細胞の増殖と分化のバランスにより制御されている。幹細胞の不等分裂はこのようなバランスを支える基本的しくみであり、メリステムを理解するためには幹細胞の不等分裂の分子制御機構の理解は不可欠である。私達はヒメツリガネゴケから単離したプロトプラストや原糸体の頂端細胞は露出した幹細胞であり、不等分裂を細胞レベルで研究するのに極めて優れていると考えている。そこで本研究はヒメツリガネゴケの幹細胞に着目し、不等分裂による幹細胞の自己複製と細胞分化が細胞周期とともにどのように制御されているかの分子機構を細胞レベルより明らかにすることを目的とし、研究を進めた。その結果、ヒストンシャペロンNAP1とそのパラログの2重遺伝子破壊体では分化した細胞からの幹細胞化が抑制された。2重遺伝子破壊体と野生型の全発現遺伝子を高速シーケンサーにより調査し、比較検討を開始できた。また、ヒメツリガネゴケのABA誘導性の分裂様式の切り替え制御に関わる因子としてアラニン・プロリンリッチなタンパク質に着目し、条件的遺伝子過剰発現体、蛍光タンンパク質をノックインすることによる融合タンパク質の局在解析、パラログを含めた二重遺伝子破壊体をそれぞれ作成し機能解析を進めた。その結果、このタンパク質は、隔壁に局在する細胞外マトリクスタンパク質であり、その局在と細胞極性制御に何らかの関わりがあるのではないかと考えられた。また細胞がもつ位置情報は、隣り合う細胞運命の決定や維持に重要であり、このような位置情報が原形質連絡を介してどのように制御されているのか、その時空間的制御を細胞レベルで解析した。その結果、細胞の位置に応じて高分子の移動度が異なること、またその違いは原形質連絡の穴の径の大きさにより制御されている可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不等分裂制御に関わる転写因子や極性因子は多重遺伝子族を形成しており、遺伝子喪失による表現型を特定することはできなかった。一方で、過剰発現による表現型をいくつかの不等分裂因子で同定することに成功し、また細胞間コミュニケーションを定量解析する実験系の開発にも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)NAP1、GRAS転写因子が制御するターゲット因子の探索を進め、幹細胞の不等分裂や増殖能維持に関わる分子機構に迫る。また低分子量Gタンパク質とその周辺の制御因子あるいはPpCDKAに着目し相互作用因子を同定・解析することにより、幹細胞の極性制御に関わる分子機構を解明する。 (2)ABAが本来不等分裂する幹細胞の分裂をどのように等分裂に切り替えるのか、その制御系を分子レベルで解明する。特にABAにより細胞極性を抑制する分子機構を上述の細胞外マトリクスタンパク質に注目することにより研究を進める。 (3)原形質連絡を介した高分子輸送の制御と細胞の分化状態との関係を調べ、それを制御する分子の同定を目指す。
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Research Products
(3 results)