2011 Fiscal Year Annual Research Report
C-H結合の位置選択的活性化機構の解明と新触媒系のデザイン、開発
Publicly Offered Research
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
23105516
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
安藤 香織 岐阜大学, 工学部, 教授 (70211018)
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Keywords | 分子軌道計算 / 遷移金属触媒 / 反応機構 / 活性化エネルギー |
Research Abstract |
フェニル酢酸誘導体の酢酸パラジウム触媒を用いるオルト位C-H活性化とオレフィン化反応の反応機構を調べるために、分子軌道計算を行った。計算のモデルとしてフェニル酢酸アニオン(1)、メチルアクリレート(2)およびPd(OAc)2を用いてB3LYP/6-31G*,Pd:SDDレベルで解析した。Pd(OAc)2と1から錯体生成後、フェニル基とのπ-complex生成は容易に起こり、C-H活性化による酸化的付加によりAr-Pd-H(OAc)(OCOAr)が生成する(Int3)。この過程の活性化エネルギーは24.6 kcal/molであった。還元的脱離による酢酸の脱離は容易に起こり(6.2 kcal/mol) Int4を生成、酢酸のプロトンがカルボキシル酸素に移ってフェニル酢酸のカルボキシル基がPdから離れ、かわりにメチルアクリレートが配位にしてInt5となる。アルケン二重結合のPd-Ar結合への挿入反応は10.4 kcal/molのエネルギー障壁で起こり、C-C結合の回転の後、β水素が脱離してArCH=CHCO2Meが生成する。生成したオレフィンがパラジウムから離れてから、酸素酸化により触媒が再生されて反応のサイクルが回ると考えられる。反応の律速段階はC-H活性化段階であった。触媒サイクルは通常0価と2価で説明されることが多いが、本反応では2価と4価での触媒サイクルを計算した。反応は85℃で48時間行われており、律速段階の活性化エネルギー24.6 kcal/molとよく一致しており、2価と4価での触媒サイクルは実験をよく説明していると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理論計算による反応機構の解析と合わせて、実験による解析も行った。しかし、論文記載の通りに実験を行っても、文献では96%の収率が報告されているが(Yu, J.-Q. et al., Science, 2010, 327, 315)、我々が実験を行うと5-8%の収率しか得られなかった。種々実験条件の検討を行なった所、アミノ酸誘導体をリガンドとして加えた場合に50%の収率で生成物が得られることが分かった。論文記載の実験方法について疑義を禁じ得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
実験的に信頼できる反応におけるC-H活性化反応の機構について研究を行うこととした。実験的に再現できない反応では、理論計算で得られた結果の確認や、新しい触媒のデザインなどへの発展的な研究は不可能であるためである。
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Research Products
(1 results)