2011 Fiscal Year Annual Research Report
素粒子・原子核・宇宙分野のための分野横断型線形計算手法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Research on the Emergence of Hierarchical Structure of Matter by Bridging Particle, Nuclear and Astrophysics in Computational Science |
Project/Area Number |
23105702
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
櫻井 鉄也 筑波大学, システム情報系, 教授 (60187086)
|
Keywords | 固有値解析 / 基盤ソフトウェア / 次世代シミュレーション |
Research Abstract |
本研究では、素粒子・原子核・宇宙分野で現れる大規模な線形方程式や固有値問題を対象として、これらの分野において高速化や安定化のニーズの強い各種の問題の解法開発を行うことを目的とする。複数分野の研究者との研究協力を通じて分野横断型のアルゴリズム開発を行う。ここで開発する手法を、素粒子・原子核・宇宙分野の研究者との分野横断的な研究協力により、より幅広い分野で利用可能な方法としていく。本年度は以下の研究を実施した。 (1)複数の右辺ベクトルを持つ線形方程式に対して開発したBlock Krylov部分空間法をもとに、計算過程で現れるブロック行列の直交化を用いた数値的安定性の高い解法を開発した。この解法を原子核などの分野で現れる問題に適用し、その性質を調べた。さらに、対象とする問題に適した前処理法の比較検討を行った。 (2)行列トレースのstochasticな推定法を利用した固有値分布の大域的推定を密度汎関数法で現れる問題に適用し、SCF計算のためのプロファイリング技術の開発を行った。ここで開発した方法を実空間密度汎関数法を用いたバンド計算に適用し、「京」コンピュータ上でその性能を評価した。また、シフト線形方程式に対する解法の改良を行い、原子核分野で現れる線形方程式に適用し、その有効性を確認した (3)超新星爆発のシミュレーションで現れる大規模な線形方程式を対象として、そこで現れる行列の性質を解析し、重み付きJacobi前処理を用いた前処理法を開発した。本前処理法の理論的な性質を示し、それに基づいた最適パラメータ設定手法を提案した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
年度当初に設定した3つの実施項目について、いずれも達成することができた。さらに、実施計画の項目(2)では、開発した技術を実装したソフトウェアによる「京」コンピュータでの性能評価や、シフト線形方程式の解法の原子核分野への適用など、当初の計画には含まれていなかった成果も得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
素粒子や原子核、宇宙分野の研究者と協力することで、これらの実問題で求められる解法を開発することができ、その効果は高い。一つの分野における問題点の抽出には時間をかけた交流が必要であり、応用分野の研究者の理解と協力が必要である。現状では、このような協力に理解を示す応用分野の研究者はまだ少なく、このような研究協力に対する理解を広げていくことが求められる。
|
Research Products
(38 results)