2011 Fiscal Year Annual Research Report
慢性炎症病態を制御するシグナル依存性エピゲノム制御メカニズムの解析
Publicly Offered Research
Project Area | Regulation of signal transduction by post-translational modifications and its pathogenic dysregulation |
Project/Area Number |
23117505
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
沢津橋 俊 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (70535103)
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Keywords | 炎症シグナル / エネルギー代謝 / グルココルチコイド / 翻訳後修飾 / エピゲノム制御 / 転写 |
Research Abstract |
グルココルチコイドレセプター(GR)は、「糖代謝恒常性」と「炎症」を制御する核内受容体の一つである。そのリガンドであるグルココルチコイドは血糖値維持に働くホルモンであると同時に、強力な抗炎症薬としての薬理作用を有している。このようなエネルギー代謝シグナルと炎症シグナルのスイッチングを制御する分子メカニズム解明を目指す。 これまでに生化学的手法によるタンパク質精製からLC-MS/MS解析を用いて、このスイッチングに関与するGRの翻訳後修飾パターンの同定を試みている。その結果、GRに新たな翻訳後修飾のひとつとしてO-結合型N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)修飾を見出した。また、この糖付加反応を担うO-GlcNAc転移酵素(OGT)はGR転写活性を負に制御することが明らかとなった。さらに高グルコース条件下ではGR転写活性は大きく低下することが判明し、この転写機能低下の一部をOGTが担っている可能性が示唆された。また、様々なGR変異体を作成し、このようなグルコース感受能を発揮するために必要な領域を探索した結果、一般的に核内受容体における組織特異的転写活性を発揮すると考えられているActivation function-1(AF-1)領域内に新たにグルコース感受性領域と転写抑制領域を見出した。これらの領域には複数の既知翻訳後修飾に加えて、新規の翻訳後修飾の可能性を見出しつつあり、これら修飾パターンがGRのグルコース感知能を発揮する上での重要な鍵となっていると予想する。今後は、栄養情報というシグナル情報を担うGRの新たな翻訳後修飾を同定を目指し、炎症制御に対する機能についても検討していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
GRタンパクに対する翻訳後修飾を同定する系として、生化学的手法とLC-MS/MS解析系の確立を達成し、GRにおいてこれまで報告されていないO-GlcNAc修飾の決定に成功しており、さらに変異体解析から新たな機能領域の決定も進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
GRの転写機能において新たに見つけた糖感受性の機能メカニズムの詳細を、さらに明らかにしていくために翻訳後修飾サイトの決定と修飾認識抗体の作成を試みる。また、GRとは逆に炎症系転写因子AP-1は高グルコースで転写活性が増強されるが判明したので、その分子メカニズムにGRの糖感受性の間に相関があるかを検討する。特に、AP-1においても翻訳後修飾解析を中心とした転写制御機構が存在すると予想されるため、GRと並行し、これらの解析を遂行する。また可能であれば、これら糖感受能の生物学的意義の探索を試みる。
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Research Products
(5 results)