2011 Fiscal Year Annual Research Report
マイマイカブリのゲノムと適応形態遺伝子
Publicly Offered Research
Project Area | Genetic bases for the evolution of complex adaptive traits |
Project/Area Number |
23128507
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
曽田 貞滋 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (00192625)
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Keywords | ゲノム / 適応 / 形態 / 遺伝子 / オサムシ / QTL |
Research Abstract |
本研究では,日本固有の貝食性オサムシ亜族で,地理的集団間で外部形態が多様化しているマイマイカブリを対象として,適応形態の多様化の背景にある遺伝子群を,連鎖地図作成,QTL解析,ゲノム配列決定,候補遺伝子探索の一連のアプローチによって解明する.本年度は以下の項目について実験,解析を行った. (1)形態の遺伝的基盤の解析:すでに交配実験が完了している狭頭・巨頭亜種間交雑集団(戻し交雑BC1)を用いて,まず量的遺伝解析を行い,狭頭と狭頭の形態分化に関連する形質の遺伝相関と,遺伝子座数を明らかにして,論文を投稿した.頭・胸部の幅,長さは相関して変化する傾向があり,「細く幅狭く」~「太く短く」の間を変化する傾向があった.各部の幅や長さに関与する遺伝子座の数は3個以下であった.また,AFLPマーカーと核遺伝子配列によるマッピングを行い,連鎖地図作成を行って,形態形質についてのQTLを推定した.その結果やはり体形が少数のQTLで決まっており,またQTLは3つの狭い領域にのみ存在していた.現在論文を作成中である. (2)ゲノム塩基配列決定:マイマイカブリの全ゲノムを解読するための実験を開始した.まず,解析対象とする粟島産アオマイマイカブリ雄のゲノムサイズを推定し,約330M bpという結果を得た.この値はこれまでの既知のオサムシのゲノムサイズ235M bpよりかなり大きいが,ゲノム解読には手頃な大きさのサイズであることが確認された.ゲノムシーケンスの手始めとして,粟島産アオマイマイカブリの実験室内飼育第1世代1雄からDNAを抽出し,インサートサイズ180bpと500bpのペアエンドシーケンス用のライブラリを作成し,I11umina Hiseq2000で2レーン分のシーケンスを行った.その結果,比較的良好なシーケンスデータが得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では,新規ゲノムの解読を中心にして,複合適応形質の遺伝的基盤を解明することが目的となっているが,ゲノムシーケンスで十分な結果を得ることが鍵となっている.現在のところ,ゲノムシーケンスの実験は順調に進んでおり,アセンブルを早急に行う体制も整備している.また,適応形態に関する量的遺伝解析とQTLマッピングも論文かが進んでおり,おおむね順調に進展していると自己評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度取得したゲノムシーケンスのアセンブルを6月までに行う.その結果によって,追加シーケンスの必要性,必要となるシーケンスの種類(HiSeq2000のペアエンド,メイトペアのインサイーサイズPacBioの利用,など)を速やかに判断して実行に移す.次年度内にゲノム解読を終了することが必要であり,そのために最善の計画を立てる必要がある.またアセンブルが終わり,ゲノムの大部分をカバーしていることが確認された段階で,HiSeq2000を用いたRADマーカーによる高精度の連鎖地図作成とQTLマッピングを行い,ゲノムのアセンブルとQTLの候補遺伝子の探索に,インタラクティブに利用する.
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