2011 Fiscal Year Annual Research Report
ツチガエル地域集団における生殖腺性差構築システムの多様性と普遍性
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular mechanisms for establishment of sex differences. |
Project/Area Number |
23132508
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
三浦 郁夫 広島大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (10173973)
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Keywords | 生殖線 / 性差 / ツチガエル / 性染色体 / 性決定機構 |
Research Abstract |
脊椎動物における性差構築の遺伝的仕組みには、性決定様式、性染色体の分化、そして生殖腺分化の性ホルモン感受性など、動物間で著しい多様性が存在する。本研究では、とくに生殖腺の性差構築機構における多様性と普遍性を明らかにする目的で、性決定機構や性染色体の分化の程度が地域集団で異なるツチガエルを用いて、生殖腺の性分化が性ホルモンに対して示す感受性の違いを調べた。 ツチガエルの地域集団は、現在、大きく4つに分けられる。祖先型集団としての西日本と東日本集団は性決定機構がXY型であり、未分化な性染色体をもつ。一方、それらから派生した2つの集団、XY集団とZW集団は、それぞれXY型とZW型の分化した性染色体をもっている。今回、以上4つの集団を用いて、性ホルモン(アンドロステロンとエストラジオール)、アロマターゼ阻害剤(4-OHA)およびアンドロゲンレセプター拮抗阻害剤(フルタミド)が生殖腺の性分化に与える影響を調べた。さらに、性分化に関連する10個の遺伝子について性的二型発現を示す遺伝子を選び、それらの発現変化と性転換との関連を調べた。その結果、祖先型の2つの集団は性ホルモンや阻害剤によって生殖腺の性が容易に転換し、性ホルモンに対して著しい感受性をもつことがわかった。その際、アロマターゼCyp19遺伝子の発現変化が性転換と完全に連鎖していた。一方、ZW集団では、雄から雌への性転換は生じたが、逆は起こらず、Cyp19の発現がZWメスで高いまま維持されていた。このことから、ZWメスの生殖腺では、性ホルモンの影響を受けずにCyp19の高発現を維持する機構が存在し、これにより遺伝的メスの生殖腺では精巣への性転換が抑制されていると考えられた。そして、XY集団では、いずれの方向への性転換も起こらなかった。このXY集団では性ホルモンから完全に独立した生殖腺の性分化機構が成立していると推測された。以上から、生殖腺の性分化における性ホルモン感受性は、同じ遺伝的背景をもつツチガエル地域集団の間で容易に変化することがわかった。そして、ZW集団のヘテロの性とXY集団の雌雄に見られる性ホルモン非依存の性分化機構は、それぞれの系統発生を通じて収斂的に、独自に獲得されたものであることが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ツチガエルの4つの地域集団について、生殖腺の性分化における性ホルモン感受性の多様性を明らかにし、その性転換の鍵となる遺伝子を同定した。当初の3つの目的のうち2つを達成できたが、3つ目に掲げた性分化関連遺伝子の発現細胞の同定がまだできておらず、現在、実験を進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究によって、生殖腺の性分化における性ホルモン感受性の多様性を明らかにし、Cyp19遺伝子がその鍵となる事を突き止めた。そして、性転換に抵抗性を示すZWメスの生殖腺においては、Cyp19の高発現を維持する機構の存在が示唆され、それを制御する2つの遺伝子が候補としてあげられた。そこで、今後は、この2つの候補遺伝子の機能解析を行うことにより、生殖腺の性分化における性ホルモン非依存の分子機構を明らかにする。
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Research Products
(10 results)