2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規エストロゲン依存性乳癌細胞増殖機構のシステム的統合理解
Publicly Offered Research
Project Area | Integrative Systems Understanding of Cancer for Advanced Diagnosis, Therapy and Prevention |
Project/Area Number |
23134504
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
片桐 豊雅 徳島大学, 疾患ゲノム研究センター, 教授 (60291895)
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Keywords | 乳癌 / エストロゲン / 阻害ペプチド |
Research Abstract |
本邦の女性において最も多い癌である乳癌の多くはホルモン(エストロゲン:E2)、依存性であり、その受容体(エストロゲン受容体:ER)の活性化を通じて増殖促進する。その機構には、転写制御因子としてERが機能するもの(ゲノム的活性化)と細胞膜に局在する膜型ERとして細胞内リン酸化カスケードの活性化に働く機能(非ゲノム的活性化)が報告されているが、その分子機構は未だ不明な点が多い。 申請者はこれまでに乳癌の網羅的遺伝子発現解析を通じて新規ER活性化制御分子ERAP1を同定し、詳細な機能解析より、ER陽性乳癌細胞にてERAP1が細胞質内でER活性化抑制因子PHB2(prohibitin2)と結合することにより、その抑制機能を阻害してERの恒常的活性化を導くことを証明した。さらに申請者はERAP1-PHB2結合阻害ペプチドを見いだし、ER陽性乳癌細胞へ添加することで、PHB2のER活性抑制機能を誘導し、顕著な増殖抑制効果を引き起こすことを証明している。 本研究計画では、このERAP1-PHB2阻害ペプチドを用いてE2依存性乳癌細胞における網羅的遺伝子発現情報解析およびプロテオーム解析を行い、そのデータに基づいたシステムバイオロジーによる新たなE2依存性乳癌シグナル経路モデルの構築を試みる。さらに、ERAP1-PHB2阻害ペプチドおよびRNA干渉法による、今回同定された新規シグナル経路(分子)の量的または質的変化の検証、既存のホルモン剤の新規シグナル経路に与える影響や,大規模な乳がん臨床検体を用いて、予後および治療効果などの臨床病理学的所見と相関解析を行うことで、E2依存性乳癌に対する新規診断法および治療法の開発を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の計画予定であったE2依存性乳癌細胞への結合阻害ペプチド投与後のマイクロアレイ解析およびプロテオーム解析よる遺伝子発現とタンパク量の時系列変動データの取得が終了し、連携研究者および研究協力者の協力によるゲノムワイドなシグナル伝達のシミュレーションモデルの構築を現在進めており、ERシグナル分子に関してはmRNAレベル・タンパクレベルともに経時的な定量的検証も一部終了していることから、概ね当初の計画通り進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
網羅的遺伝子発現解析およびプロテオーム解析によって発現変動の認められた分子に関して、ERAP1-PHB2結合阻害やRNA干渉法による発現変動、質的変動の検証を平成23年度に続いて継続的に進める。さらに既存のホルモン剤による感受性、耐性への関与も調べ、これらの分子の発現と臨床病理学的所見、治療効果との大規模相関解析により新たな治療法または診断法の開発を目指す。
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Research Products
(2 results)