2012 Fiscal Year Annual Research Report
分子標的探索のための化学選択的修飾部位内在型リンカーの開発
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical Biology using bioactive natural products as specific ligands: identification of molecular targets and regulation of bioactivity |
Project/Area Number |
24102521
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
大高 章 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (20201973)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 標的タンパク質 / アビジン / ビオチン / アミド結合切断 / 刺激応答型アミノ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
相互作用する標的が明確でない生理活性物質が多数ある。そこで、これら生理活性物質の標的タンパク質探索のための方法論の確立はケミカルバイオロジー分野において極めて重要な研究課題である。アビジンービオチン相互作用を利用したPull-down法があるが、アビジンービオチンの高親和性のため標的タンパク質溶出が困難である場合が多い。そこで、標的タンパク質を特異的に溶出でき、かつ溶出後特異的なラベル化が可能なリンカー分子(トレーサーブルリンカー)の開発を行うこととした。標的タンパク質溶出には、特定の刺激でアミド結合切断が可能となる刺激応答型アミノ酸を利用することとした。また標識可能官能基としてアミノオキシ基を利用し、アルデヒド分子による標識を目指した。まず、生体内にほとんど存在しないフッ素アニオンによりアミド結合切断を誘起する刺激応答型アミノ酸の開発を行い、モデルリンカーの合成およびモデルペプチドの溶出、標識等に関する実験を行い、良好な結果を収めることができた。しかし、この系をモデルタンパク質に適応した場合、フッ素アニオンによる切断反応の進行が不十分であることが分かった。そこで、リンカー切断に利用する化学刺激をチオール処理とすることとし、まず、チオールによりリンカー切断を起こすアミノ酸の合成を行い、これを利用してチオール応答型トレーサブルリンカーの調製を行った。次いで、本リンカーを利用してエノラーゼをモデルタンパク質として、濃縮、溶出、ラベル化という一連の研究を遂行した。その結果、まだ十分な溶出、ラベル化効率を得るには至っていないが、エノラーゼの濃縮、チオールによる溶出、アルデヒドによるラベル化が可能であるとの結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、生理活性物質の標的タンパク質の同定のための方法論の創出にある。独自のアイデアに基づいたトレーサーブルリンカーを開発し、モデルタンパク質レベルではあるが、濃縮、特定化学刺激に基づく溶出、化学選択的反応を利用したラベル化に成功している。このような経緯から、当該研究課題は、概ね順調に進展しているものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進の方向性は次の2点に重点を置く。現在トレーサブルリンカーの切断にはチオール処理を利用している。選択的切断は可能であるが、切断効率の検証などは充分にはなされていない。そこで、切断効率の検証と切断効率向上に向けた取り組みを行う。また、切断効率向上に無理が生じる場合には、チオール以外の他の切断刺激の利用も視野に入れて、研究を遂行する。2点目の重要検討課題は、プロテーオームサンプル内から、特定生理活性物質に対応した標的タンパク質を濃縮できるかである。これについてはインドメサシンをリガンドとし、細胞抽出液からのCOXの濃縮、ラベル化を指標に検討を加える予定である。これらの検討を行うことで、トレーサブルリンカーのケミカルバイオロジー分野における有用性の獲得に努める予定である。
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