2012 Fiscal Year Annual Research Report
非アレルギー性くしゃみ反射を司る天然物リガンドの探索
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical Biology using bioactive natural products as specific ligands: identification of molecular targets and regulation of bioactivity |
Project/Area Number |
24102529
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
犀川 陽子 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (20348824)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 有機化学 / 生理活性 / くしゃみ反射 / 脂肪酸 / アレルギー・ぜんそく / 構造活性相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体即時反応の一つである非アレルギー性くしゃみ反射に注目し、人に非アレルギー性のくしゃみを引き起こす天然有機化合物を用いた研究を行っている。 アカクラゲ由来のくしゃみ誘発物質の探索 アカクラゲが網にかかり、そのまま乾燥してできる粉を吸引すると、くしゃみが止まらないという。このアカクラゲ由来のくしゃみ誘発物質を単離、構造決定する目的で研究を行った。活性試験として、定期的なオブアルブミン投与によって作成した鼻アレルギーマウスモデルの鼻孔に試料を塗布する方法を採用し、この評価方法が非アレルギー性くしゃみ誘発物質であるピペリンにも有効であることを確認した。この活性試験に基づき、アカクラゲの抽出物の酢酸エチル層から活性成分として不飽和脂肪酸であるEPAおよびDHAを単離した。またこれらの市販品を用いて同等の活性を有することを確かめた。さらに、市販の脂肪酸を用いて調べたところ、脂肪酸の不飽和度依存的にくしゃみ誘発活性の強さが変わることがわかった。 グラヤノトキシン類の構造とくしゃみ誘発活性との相関に関する研究 ハナヒリノキはその名の通りくしゃみを引き起こすことが有名な植物で、葉を乾燥させたものが殺虫剤として利用されてきた。この毒成分はグラヤノトキシン類であり多種の類縁体が報告されているほか、合成や化学誘導もされ、詳しく研究されている。主成分であるグラヤノトキシンⅠを始めとしてグラヤノトキシンⅡ, Ⅲ, Ⅳがくしゃみを引き起こすという報告はあるが、くしゃみ誘発活性についての定量的データはなかった。このグラヤノトキシンⅠ,Ⅲをハナヒリノキから単離し、化学誘導を行って計9種類のグラヤノトキシン類を用意し、くしゃみ誘発活性の定量を行った結果、くしゃみ誘発活性と構造の相関は毒性と構造の相関に近いことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の本研究の主たる目的は、これまでにくしゃみを誘発することが明らかになった脂肪酸やグラヤノトキシン類の構造活性相関研究を通して、くしゃみ反射が誘発物質の正確な分子認識に基づくものであることを明らかにし、特定の受容体の存在を示唆することである。本年度はくしゃみ誘発活性の定量によって、脂肪酸が不飽和度依存的に活性を示すこと、グラヤノトキシン類のくしゃみ活性の有無、活性の強弱を明らかにすることができた。これにより、非アレルギー性くしゃみ誘発物質の構造のわずかな違いが活性に大きく関わることを示すことができた。25年度はこれらの結果を学術雑誌に投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
アカクラゲのくしゃみ誘発物質の探索については、くしゃみ誘発活性の定量に注力した本年度の研究体制から、くしゃみ誘発物質の探索方法の見直しに戻り、アカクラゲの不安定な刺胞毒の可能性も視野に入れた新規活性本体の探索に力を入れる。タンパク性刺胞毒の検出、精製を想定した装置の購入を始めている。一方、グラヤノトキシン類のくしゃみ誘発活性の定量から、グラヤノトキシンⅠが非常に強い活性を持つことが明らかになったため、今後は他の類縁体についてのくしゃみ活性を調べて知見を集める一方、グラヤノトキシンⅠを天然物リガンドとしてくしゃみ反射を司る受容体をつきとめたい。グラヤノトキシン類の持つイオンチャネル脱分極活性をヒントに、グラヤノトキシンⅠが特異的に強く作用するイオンチャネルがくしゃみ受容体であると想定し、イオンチャネルの絞り込みについて専門家に協力、アドバイスを仰ぐ予定である。
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Research Products
(5 results)