2012 Fiscal Year Annual Research Report
プロテオミクスを用いたFGヌクレオポリンのリン酸化による核膜孔制御の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Target recognition and expression mechanism of intrinsically disordered protein |
Project/Area Number |
24113717
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
小迫 英尊 徳島大学, 疾患酵素学研究センター, 准教授 (10291171)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 核膜孔複合体 / 輸送運搬体 / 核ー細胞質間輸送 / リン酸化 / MAPキナーゼ / FGリピート / プロテオーム / タンパク質間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
核膜孔複合体を構成する約30種類のヌクレオポリンの内、約1/3はFG(フェニルアラニンーグリシン)ヌクレオポリンと呼ばれ、そのFGリピート領域は典型的な天然変性タンパク質の機能を有している。最近研究代表者らは、FG リピート領域がERK/MAPキナーゼによってリン酸化されると輸送運搬体の一つであるimportin-βとの相互作用が抑制されることを示した。本研究では、リン酸化によるFG ヌクレオポリンの分子認識能の調節機構とそれによる核膜孔の機能制御をプロテオミクスやイメージングなどの手法を用いて包括的に解明することを目的としている。本年度はまず、FGヌクレオポリンの一つであるNup50に対し、Phos-tagウェスタンブロット法と抗リン酸化抗体を用いた免疫細胞染色により、Nup50上の同一部位がERKのみならず、p38 MAPキナーゼや分裂期キナーゼによってリン酸化されることを見出した。さらにHaloタグタンパク質を付加したNup50の野生型およびリン酸化不能型変異体を細胞内に発現させ、生細胞タイムラプスイメージングを行ったところ、リン酸化不能型変異体を発現する細胞では分裂期への進行が顕著に阻害されていた。またERKによって強くリン酸化されるFGヌクレオポリンであるNup50、Nup58、Nup62、Pom121、Nup153、Nup214およびNup358のFGリピート領域をビーズに固相化し、ERKによるリン酸化反応を行った場合と行わなかった場合で培養細胞抽出液からプルダウンされるタンパク質の変化を検討した。その結果、importin-βのみならず、importin-7、importin-5、transportin、CRM1、Tap/NXF1、NTF2などの様々な輸送運搬体タンパク質との相互作用がFGヌクレオポリンのリン酸化によって抑制されることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Haloタグタンパク質を付加したNup50の生細胞タイムラプスイメージングでは、蛍光標識されたHaloタグリガンドの種類を変えることによって、GFPやmCherryなどの様々な蛍光タンパク質を発現する細胞で多重イメージングすることが容易であり、チューブリン、ヒストン、他のヌクレオポリンなどとNup50を同時に観察することで多くの情報が得られている。またFGヌクレオポリンを固相化したビーズによるプルダウンアッセイでは、様々な輸送運搬体タンパク質を再現性よく検出できており、リン酸化による相互作用の制御を予定通り明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
プロテオミクス技術によってFGヌクレオポリンのERK依存的リン酸化部位を大規模に同定・定量するため、安定同位体アミノ酸を用いた代謝標識法(SILAC)を行う。即ち細胞を異なる安定同位体アミノ酸を含む培地で培養した後にERK経路を活性化または阻害し、混合した細胞抽出液を種々のFGヌクレオポリンに対する抗体で免疫沈降する。そして沈降物を酵素消化し、LC-MS/MSによってリン酸化ペプチドの同定と定量を行う。同定したリン酸化部位をアラニンまたはグルタミン酸に置換することにより、リン酸化不能型またはリン酸化模倣型のFGヌクレオポリンを作製し、細胞内に導入する。そして生細胞イメージング観察や下記のセミインタクト細胞を用いた核内移行アッセイを行い、核膜孔のリン酸化制御を明らかにする。
核膜孔が約40 kDa以上の分子に対してバリアとして働く一方、より大きな(約100 kDa)輸送運搬体を能動的に通過させる分子機構は核―細胞質間輸送の研究分野で最も重要な課題である。本研究では、哺乳類培養細胞をジギトニンで処理し、セミインタクト細胞でのin vitro核内移行アッセイを行う。ATPと活性型ERKまたは不活性型ERKをセミインタクト細胞に加えて核膜孔中のFGヌクレオポリンのリン酸化状態を操作し(既に作製済みのNup50の221番目のセリン残基に対する抗リン酸化抗体を用いた細胞染色によってリン酸化状態を確認する)、GFP-importin-βや2xGFPの核内移行をタイムラプス観察によって比較する。
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Research Products
(5 results)