2012 Fiscal Year Annual Research Report
藻類ファージの生活史をまねた多元代謝経路によるアルカン高生産系の構築
Publicly Offered Research
Project Area | Synthetic biology for the comprehension of biomolecular networks |
Project/Area Number |
24119501
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
鈴木 石根 筑波大学, 生命環境科系, 教授 (10290909)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ヒスチジンキナーゼ / シアノバクテリア / エチレン / 遺伝子発現制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、藻類による有料物質の大量生産の問題点を解決するため、ラン藻細胞に導入した複数の代謝系をファージに倣って時系列的に誘導制御することにより、有用バイオマスであるアルカン/アルケンの高生産系を構築する。 シロイヌナズナの5種のエチレンセンサーから、キメラ型のヒスチジンキナーゼを作製し、ラン藻内で発現させた結果、3種は常に活性型で2種は常に不活性型であって、いずれもエテホン、エチレンの刺激に応答することができなかった。エチレンセンサーとキナーゼドメインのリンカーに相当するαヘリックスの長さにより、キメラセンサーの活性を調節できることがわかった。TakaraBio社のiDimerizeシステムを活用し、人工的に活性を制御するセンサーの構築を目指したが、リガンドに応答する人工センサーは得られなかった。 植物のエチレン受容部が、ラン藻細胞内でエチレンに応答しない原因として、センサーが本来局在する植物の小胞体膜とラン藻の細胞膜の脂質組成の違いが原因となっていることが考えられた。ラン藻のヒスチジンキナーゼでエチレンセンサーのエチレン結合部位と高い相同性が指摘され、実際にエチレンとの結合が報告されているSlr1212の膜貫通ドメインをキメラ型のヒスチジンキナーゼに組み込むことでエチレンに応答可能なセンサーの構築を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナの5種のエチレンセンサーから、キメラ型のヒスチジンキナーゼを作製し、ラン藻内で発現させた結果、3種は常に活性型で2種は常に不活性型であって、いずれもエテホン、エチレンの刺激に応答することができなかった。活性型となったのは、末端にレシーバードメインを有する構造のエチレンセンサーであった。ヒスチジンキナーゼドメインのアミノ酸配列との相関は見られなかった。それらのレシーバードメインを持つエチレンセンサーが植物細胞内でどの様な機能を有するかは明らかではない、今後の解析が必要である。 エチレンセンサーとキナーゼドメインのリンカーに相当するαヘリックスを順に欠失していくと、活性だ他のキメラセンサーの活性が周期的に変動することがわかった。このことはリンカーによりN末端側のシグナルインプットドメインとC末端側のキナーゼドメインの配位方向に変化が、キナーゼの活性の強弱を決めている要因であることを示すもので、将来的にリンカー部分の長さにより、キメラセンサーの活性を調節できることがわかった。 人工的に細胞内で目的タンパク質を低分子リガンドの投与により、二量体化を抑制・誘導できるTakaraBio社のiDimerizeシステムを活用し、人工的に活性を制御するセンサーの構築を目指した。元々動物細胞での使用を目的としたキットで、原核細胞への応用例はほとんどなかったが試みた。残念ながら恒常的に活性型の分子しか得ることができず、低分子リガンドの投与によってもそれに応答する人工センサーは得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
植物のエチレン受容部が、ラン藻細胞内でエチレンに応答しない原因として、センサーが本来局在する植物の小胞体膜とラン藻の細胞膜の脂質組成の違いが原因となっていることが考えられた。植物の小胞体膜は新脂質を主な膜脂質として構成されるが、ラン藻の細胞膜は糖脂質を主成分としリン脂質はホスファチジルグリセロールを唯一含むだけである。この違いが膜中に存在するエチレンの結合部位との関係を変化させていた可能性があるため、ラン藻のヒスチジンキナーゼでエチレンセンサーのエチレン結合部位と高い相同性が指摘され、実際にエチレンとの結合が報告されているSlr1212の膜貫通ドメインをキメラ型のヒスチジンキナーゼに組み込むことでエチレンに応答可能なセンサーの構築を目指したい。また、エチレンセンサーのエチレン結合部位に変異を導入し、エチレンに応答性となるものをスクリーニングすることも検討する。
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Research Products
(3 results)