2013 Fiscal Year Annual Research Report
特殊減光フィルタを用いた近赤外線で明るい重力波源の観測
Publicly Offered Research
Project Area | New development in astrophysics through multimessenger observations of gravitational wave sources |
Project/Area Number |
25103509
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
永山 貴宏 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00533275)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 近赤外線 / 減光フィルタ |
Research Abstract |
近赤外線天体観測において、大きな問題となっている非常に明るい天体を、検出器を飽和させず、かつ、高い精度で測光するための部分減光フィルタを設計・製作した。このフィルタは名古屋大学が所有するIRSF1.4m望遠鏡+近赤外線カメラSIRIUSに特化されており、この観測装置に取り付けた際、直径1分角の天域の光量を5000分の1に減光させる一方、半径3.3分角の外側は一切の減光を受けない特殊な減光フィルタである。このため、このフィルタを使用すると、対象となる天体だけを減光されるが、それ以外の天体は減光を受けないため、明るい星と暗い星を同時に観測可能になる。この機能を利用して、これまで不可能であった、明るい天体の測光に際して、同一視野内の暗い天体を測光基準星とすることが可能となり、高い快晴度でなくても、高い測光精度が期待できる。 このフィルタを実際に製作し、2013年9月および2014年3月にIRSF望遠鏡に搭載して、試験観測を行った。その結果、期待通りの減光性能が得られ、明るい天体と暗い天体を同時に観測できることが確かめられた。 2つの測光標準星を用いて、製作した減光フィルタの減光性能を調べたところ、Jバンド:0.02%、Hバンド:0.016%、Kバンド:0.017% という結果を得た。この結果はJバンドにおいて、事前の予測どおりの値であった。一方、H、Kバンドにおいては、0.003%程度低い、すなわち、減光率が大きい値となった。しかし、本研究では減光率が決まってさえいれば、0.003%程度の違いは問題とならない。 また、近赤外線で明るく、また、非常に興味深い天体であるηカリーナの観測をモニタリング開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り研究を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
5000分の1部分減光フィルタの試作、および、試験観測は成功裏に終わった。この結果をふまえ、今後は、1) より減光率の大きい100000分の1減光フィルタの製作、2) 他の望遠鏡でのこのフィルタの試験観測、を予定している。 1)については、5000分の1減光フィルタでも検出器が飽和し、観測することができない、近赤外線で最も明るい一部の天体や、銀河系内で発生した超新星の観測を意図したものでありる。これらは現在の近赤外線天体観測網では、決して難しくはないものの、観測ができない状態にあり、非常に重要である。5000分の1減光フィルタの経験をフィードバックした上で、フィルタを作成し、試験観測を実施する。 2)については、現在、5000分の1減光フィルタが使用可能なIRSF望遠鏡は、南半球に位置するため、全天のうち、南天と北天の一部しか観測できない。そのため、その観測できない領域をカバーするためには、北半球の望遠鏡に同種のフィルタを導入する必要がある。私が4月から着任した鹿児島大学1m望遠鏡+近赤外線カメラに同種フィルタを搭載し、その有効性を確かめる。
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