2013 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトサイトメガロウイルス感染により活性化されるパターン認識受容体活性化機構の解析
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular basis of host cell competency in virus infection |
Project/Area Number |
25115502
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高岡 晃教 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (30323611)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ウイルス感染 / 自然免疫応答 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
免疫不全の患者で重篤な感染症を引き起こすことで臨床的に問題となっているDNAウイルスであるヒトサイトメガロウイルス(HCMV)による自然免疫認識機構については充分に明らかにされていない.そこで我々は,HCMV感染によって活性化されるPRRの同定を試み,その下流のシグナル経路を明らかにすることを本研究の目的とした.さらに,HCMV由来の蛋白であるpp65は宿主のキナーゼによってリン酸化修飾を受け,かつそれ自身キナーゼ活性を有していることに着目し,宿主側との勢力バランスの制御機構に興味深い局面を見出したいと考えている. 我々は,HELF細胞において,HCMV感染やHCMV由来のDNA(HCMV-DNA)を細胞内に導入した際に誘導される自然免疫応答の活性化が細胞内DNAセンサー分子の1つであるIFI16依存的であることを見出した.さらに,このIFI16に会合するHCMV由来の構造タンパク質pp65を細胞に過剰発現させただけでもIFI16依存的な自然免疫応答が活性化されたことから,IFI16はHCMV感染において,DNAだけではなくpp65をも認識している可能性が考えられた.さらに,IFI16とpp65の会合はHCMV-DNA存在下でも変化が認められなかったことから,IFI16はHCMV-DNA非依存的にpp65を認識していることが示唆された.一方,キナーゼ変異pp65を細胞に過剰発現させても自然免疫応答は認められなかったことから,pp65はそのキナーゼ活性によりIFI16経路を活性しているユニークな機構の存在が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
下記のような研究結果が得られており,研究計画に沿って実験を遂行することが出来たと考える. HELF細胞において,HCMV感染やHCMV由来のDNA(HCMV-DNA)を細胞内に導入した際に,IFN-b mRNAの発現誘導が認められ自然免疫経路が活性化していることが示唆された.またこの活性化は,細胞内DNAセンサー分子の1つであるIFI16依存的であることを見出した.さらに,このIFI16に会合するHCMV由来の構造タンパク質pp65を細胞に過剰発現させただけでもIFI16依存的な自然免疫応答が活性化されたことから,IFI16はHCMV感染において,DNAだけではなくpp65をも認識している可能性が考えられた.さらに,IFI16とpp65の会合はHCMV-DNA存在下でも変化が認められなかったことから,IFI16はHCMV-DNA非依存的にpp65を認識していることが示唆された.一方,キナーゼ変異pp65を細胞に過剰発現させても自然免疫応答は認められなかったことから,pp65はそのキナーゼ活性によりIFI16経路を活性しているユニークな機構の存在が示唆された.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度では,昨年度に引き続き,下記の計画に基づいてHCMV感染でのIFI16認識機構についてウイルスゲノムDNAとpp65に着目して検討を進める.pp65とIFI16間の結合は,直接結合かを検討するため,免疫共沈降やリコンビナントタンパク質を使って解析する.また DNAとIFI16との結合性に対するpp65の作用についてもpull down アッセイなどを用いて解析する.申請者らは既に,ヒト胎児肺線維細胞においてpp65単独発現により,おそらくウイルスゲノムDNA非依存的にIFI16を介して自然免疫応答が誘導される事を見出している.さらにウイルスゲノムDNAとpp65の相互作用について詳細に検討するため,pp65のDNAによるIFI16シグナルの活性化に対する影響について,I型IFNsや炎症性サイトカイン等の下流の遺伝子発現をqRT-PCRやルシフェラーゼアッセイを用いて検討する.HCMV感染時におけるpp65とIFI16の細胞内局在部位について,蛍光イメージングによる共焦点レーザー顕微鏡を用いた解析を行う.pp65がそのキナーゼ活性によりIFI16経路を活性している可能性が示唆されたため,pp65が標的とするタンパク質の同定を試みる.pp65はIFI16経路を活性化させることから,まずIFI16やそのシグナル下流の因子を候補分子として検討し,Western blotによってpp65にリン酸化される分子を探索する.HCMV感染時におけるIFI16シグナル活性化を介する自然免疫応答の誘導にpp65が関与するか検討するため,pp65を欠損させた変異型HCMVを作製し,この変異ウイルスを感染させることで誘導されるI型IFN遺伝子や炎症性サイトカインの発現誘導をqRT-PCRによって解析し,更にそのシグナル活性化の意義について細胞障害性やウイルス量を測定する事で評価する.
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