2013 Fiscal Year Annual Research Report
DNA修復・複製の連携役としてのチェックポイント機構とクロマチン制御の機能関連
Publicly Offered Research
Project Area | Coupling of replication, repair and transcription, and their common mechanism of chromatin remodeling |
Project/Area Number |
25131707
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Innovative Areas (Research in a proposed research area)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古谷 寛治 京都大学, 放射線生物研究センター, 講師 (90455204)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 分子生物 / チェックポイント / DNA損傷 / リン酸化 |
Research Abstract |
DNAチェックポイント機構はDNA損傷の検出機構であると同時にゲノム安定維持機構の司令塔でもある。チェックポイント因子の中でも重要なのはRad9タンパク質であり、他のチェックポイントタンパク質をDNA損傷部位へと繋ぎ留める事で、チェックポイント機構の発動に寄与する。これまでの酵母を用いた解析から、Rad9の損傷部位からの解離が、Rad9上で起こるリン酸化フィードバックによって引き起こされる事、また、チェックポイント機能ではなくDNA損傷の修復を円滑に進めるために必要である事を見出してきた。本研究ではこれまで酵母細胞で得られて来た知見をヒト細胞での解析に発展させた。具体的には まず、ヒトRad9のにおけるリン酸化フィードバック機構の解明を分子生物学的手法を用いて行なった。並行して、蛍光標識したRad9タンパク質をヒト培養細胞内で発現させ細胞生物学的にDNA損傷部位への結合ダイナミクスを計測し、リン酸化がRad9タンパク質の分子動態に及ぼす影響を測定した。 まず、ヒトRad9タンパク質に置いても私達が酵母で示して来たリン酸化部位が実際に細胞内でリン酸化される事を明らかにした。興味深い事にリン酸化は通常の条件では検出出来ず、細胞を脱リン酸化酵素阻害剤で処理した際にのみ検出出来た。おそらくは我々の注目したリン酸化部位は普段はリン酸化されると同時に即座に取り除かれていると思われた。また、このリン酸化の前段階のリン酸化も厳密に制御されている事を見出した。一型脱リン酸化酵素(PP1)が働いていると思われ、Rad9上の結合部位を破壊するとRad9のリン酸化が亢進し、逆に結合を強めると思われる変異を導入したところ脱リン酸化が亢進した。高リン酸化状態を模擬する変異Rad9タンパク質を細胞内で発現させると高い細胞毒性をしめしたためリン酸化を厳密に制御する必要があると思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた細胞内ダイナミクス解析の系を起ち上げる事ができた。所内に既にある設備を使用する実験であるが、当初難航していた蛍光標識されたRad9タンパク質の安定発現細胞を樹立する事ができた。予備的な観察からRad9のリン酸化がRad9のDNA損傷部位への単位時間あたりの結合量を増大させる事を見出した。 また、生化学的解析においてはRad9複合体とその活性化因子であるRad17複合体を昆虫細胞から精製する事に成功し、両複合体の相互作用を検出する事に成功した。結合はATP存在下でやや強く見られた。本来であれば原子間力顕微鏡を用いた構造解析に着手している予定であった。これは良質の精製タンパク質複合体を得る為に大腸菌の系から昆虫細胞の系へとシフトしたため、実験材料の調達に時間がかかった為である。 また、ヒトRad9に置けるリン酸化制御の分子解析では当初予想しなかった脱リン酸化酵素の関与を示す事が出来た。また、過剰発現の系を樹立する事でリン酸化の亢進と細胞毒性の関連を示唆する結果を得る事が出来たため、研究の方向性をはっきりさせる事が出来た。 以上のように当初予定していたRad9細胞生物学的解析や生化学的アッセイをに着手する事が可能となった。ただ、生化学的解析に関してはやや遅れていると思われる。その一方で申請時には予想しなかった制御機構の同定までたどり着く事ができたため全体的には順調に進展していると解釈してよいと考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、(i)細胞内ダイナミクス解析(ii)生化学的手法による構造解析(iii)リン酸化制御の分子解析の実験を推し進める。(i)においては蛍光標識Rad9の各種変異タンパク質を安定に発現する細胞株を用いてRad9のDNA損傷部位への結合速度と解離速度を算出する。これについてはこれまでの単位時間当たりのRad9のDNA損傷部位への集積量の測定だけでなく、蛍光退色法等を駆使する事で解離速度も算出し、リン酸化がどちらのステップに作用するのかを同定する。(ii)については精製Rad9およびRad17複合体の相互作用を試験管内で観察し、活性のある複合体を得られた事を示した後に原子間力顕微鏡を用いた構造解析へと発展させる。(iii)リン酸化の制御機構の解析においては脱リン酸化酵素の役割に踏み込んだ解析をおこなう。具体的にはsiRNA等を用いた遺伝学的な解析を行なうと同時に生化学的にリン酸化及び脱リン酸化の制御機構を試験管内再構成系を用いて解析する。また、さらに私達の注目している最終段階のリン酸化が起こって初めてRad9と作用するタンパク質の同定を試みている。具体的には酵母を用いたツーハイブリッドスクリーンを行なっており、現在幾つかの候補となる遺伝子産物を取得済みである。今後は上記の(i) (ii) (iii)の実験系を相互関連させる事でRad9のリン酸化の生理的役割、及び分子制御機構を同定していく。
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Research Products
(9 results)