2014 Fiscal Year Annual Research Report
標準ヒッグス結合のズレからテラスケールへ
Publicly Offered Research
Project Area | Particles Physics opening up the Tera-scale horizon using LHC |
Project/Area Number |
26104704
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
津村 浩二 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40648101)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヒッグス / テラスケール / 素粒子標準模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒッグスボソンの実験的検証が順調に進んでいる。多様な拡張ヒッグス模型についてのデータ解析も進んでおり、ヒッグス物理の研究はますます重要となってきている。 これまでにLHC実験で測られたヒッグス結合は、素粒子標準模型の予言と無矛盾であるが、一方で標準模型からズレる可能性が大きく残されている。そこで、将来的に期待できるヒッグス結合の精密測定を見越して、ヒッグス結合の素粒子標準模型からのズレのパターンや大きさに注目して研究を行った。 ヒッグス結合がズレた場合に起きる現象として弱ボソン散乱断面積の増大が期待されているが、そのズレの大きさとパターンによるインパクトについて定量的な評価を行った。また、理論がそのような散乱断面積の増大を起こさない場合にはヒッグス結合が一連の和則を満たす必要がある。この和則とヒッグス結合に対する実験データの無矛盾な可能性として、間違った符号のhZZ結合が許されることを見出した。 また、この和則を中性ヒッグスボソンのみが存在する系に適用すると、カストディアル対称性なしに電弱ρ値の予言値が1に決まってしまうことが分かった。さらに弱ボソンのプロパゲータに対する輻射補正の有限性が自動的に保証されることが示された。これにより、より広いクラスの模型に対して電弱精密測定の結果を適用することが可能になり、拡張模型に現れる付加的なヒッグスに対してこれまでより強い制限を与えることが可能になった。 一方で、種々の繰り込み可能な拡張ヒッグス模型に対してその現象論的な予言や制限を調べたり、新しい模型の考案を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中性ヒッグスボソンのみからなる一般的な拡張ヒッグス模型について、弱ボソン散乱のユニタリ性とプロパゲータに対する輻射補正についての関係を系統的に調べることができた。この結果を用いて、ヒッグス結合のズレが弱ボソン散乱の断面積に与えるインパクトと電弱精密測定からの制限を定量的に示した。また種々の繰り込み可能な拡張ヒッグス模型に対して現象論的解析を行った。LHC実験の再稼働によるヒッグス結合の詳細決定および直接的な弱ボソン散乱断面積の検証が待たれる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画にしたがって、荷電ヒッグスボソンを含むより一般的な拡張ヒッグス模型に枠を拡げて研究を進める。また、フェルミオンセクターを含む湯川相互作用への影響とその観測可能量についても調べる。また、26年度に新しく結果が出されたヒッグスボソンの崩壊幅を間接測定する方法をこれまでに得た結果に適用し、ヒッグス結合の新しい検証方法についても研究する。
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