2014 Fiscal Year Annual Research Report
キラル3,3’-二置換ビナフチルジスルホン酸を用いる高活性有機分子触媒の精密設計
Publicly Offered Research
Project Area | Advanced Molecular Transformations by Organocatalysts |
Project/Area Number |
26105723
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
波多野 学 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20362270)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有機合成化学 / 有機触媒 / 不斉触媒反応 / 反応設計 / 酸・塩基 |
Outline of Annual Research Achievements |
C2対称性をもつシンプルで安価なキラルビナフチル化合物は、配位子や有機分子触媒として多くの不斉触媒反応で用いられてきた汎用性のある不斉源である。特に、有機分子触媒におけるブレンステッド酸性の強さは触媒活性を特徴づける大きな要因であることから、研究代表者はキラルビナフチルジスルホン酸(BINSA)に着目している。これまでに、初めてのキラルBINSAの不斉合成とそれらを用いる不斉触媒反応の開発を重ねてきた。本研究では、これまでの研究開発を基盤として、合成が困難であったキラル3,3’-ジアリールビナフチルジスルホン酸を創製し、それらを高活性不斉触媒とする新たな触媒反応開発が研究目的である。特に、3,3’位へのアリール基導入により、立体及び電子的効果で従来よりも多様性のある精密触媒設計が可能となる。具体的には(1)3,3’-Ar2-BINSAによるシンプルな精密触媒設計、(2)キラル3,3’-Ar2-BINSAアンモニウム塩触媒の精密設計、(3)自己組織型キラル3,3’-Ar2-BINSAの精密触媒設計を行い、独創的な不斉有機触媒反応へと展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、キラル3,3’-Ar2-BINSAの効率的合成と不斉触媒反応の開発を行った。 一般にキラルビナフチル化合物の3,3’位への置換基導入は、立体的及び電子的効果の及ぼす影響が大きいため、触媒設計の常套手段となっている。特にアリール基は精密設計が容易であり、優れた置換基導入効果を発揮する。ところが、これまでキラルBINSAへの3,3’位へのアリール基の導入の一般性のある合成法は存在しなかった。研究代表者は、ごく最近、立体障害が小さい既知のキラルスルホンイミドを出発物質として、数種類のキラル3,3’-Ar2-BINSAの合成に成功している。本研究では、この合成技術を基に、不斉触媒反応開発に必要な様々なキラル3,3’-Ar2-BINSAの効率的合成を行なった。全8段階からなる合成のうち、鍵反応は選択的還元によるスルフィン酸合成・スルホン酸への収束的酸化の連続する2段階であり、収率向上の検討が必要であった。 さらに、従来のキラルブレンステッド酸では反応進行が困難な強酸性を必要とする不斉触媒反応を重点的に開発した。特に、N-Bocイミンに対する不斉付加環化反応による新規光学活性カルバミン酸エステル合成法を開発した。キラル3,3’-Ar2-BINSA を用いることでN-Bocイミンへの多点配位とともに、反応の駆動源である強酸性条件でのt-Bu基の脱離を伴う環形成を促進させたことが鍵である。高収率、高ジアステレオ、高エナンチオ選択的に対応する生成物がえられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果を踏まえて、キラルキャビティーを有する金属イオン集積型BINSA触媒の開発を行う。 研究代表者は、これまでの研究でLi(I)などのアルカリ金属イオンまたはMg(II)などのアルカリ土類金属イオンを用いて自己組織化した高活性触媒の創製に成功している。複雑な高分子量の単一分子触媒を作るのとは対照的に、シンプルなキラル小分子をin situで巧みに集積することで、高次機能を有する分子錯体触媒が一挙に構築できる。こうした超分子触媒の設計技術を基に、本研究では、典型金属イオンを用いて集積型キラル3,3’-Ar2-BINSAを創製する。例えば、強酸性かつ高次機能が必要な従来達成されていない基質を組み合わせた不斉Friedel-Crafts反応などを開発する。キラルブレンステッド酸有機分子触媒として機能できるテーラーメイドのキラルキャビティーを構築し、X線結晶構造解析で新規触媒構造も解明する。
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Research Products
(22 results)