2014 Fiscal Year Annual Research Report
後期思春期のメタ認知成熟過程を検討するマルチモダリティ脳画像計測
Publicly Offered Research
Project Area | Adolescent mind and self-regulation |
Project/Area Number |
26118703
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小池 進介 東京大学, 学生相談ネットワーク本部, 講師 (10633167)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 抑うつ症状 / 思春期 / 縦断調査 / 社会関係 / スティグマ / 統合失調症 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトは非常に長い思春期を持ち、その間に急激な身体成長が起こるだけでなく、言語機能をはじめとした認知機能も大きく発達する。言語機能の発達によって、他者認知→他者評価の理解→自己を認識できるようになり(メタ認知)、将来の自己像を見据えた長期報酬的な自己決定や、より広い社会関係の構築ができるようになる。生物学的にも、思春期から大脳辺縁系が急激に発達したのち、思春期後期に前頭前野が遅れて成熟し、長期的視野を持った行動が増加することが分かった。応募者は平成25年度より若手B [25870143]の研究代表者として、大学生の社会関係の発展と精神的健康をみる縦断調査を、都内大学生259名を対象に実施中である。本研究課題の目的は、コホート被験者の追加調査を行うことで、(1)メタ認知課題を開発し、(2)メタ認知の発達に寄与する脳構造・機能を明らかにし、(3)メタ認知の発達が、社会関係の構築、抑うつなど精神症状の出現、レジリエンスの構築にどう寄与するか検討する。 平成26年度は、研究目的(1)について、領域A02分担研究者である橋本龍一郎より支援を受け、質問紙ベースのメタ認知指標を開発した。研究目的(2)について、領域A03と協議のうえ、MRIの撮像プロトコルを確定した。さらに領域A01のコホート研究で採用している指標について一部共通化を図り、さらにiPadを用いた認知機能バッテリーを取得することとした。これらのパッケージを確立し、50名の大学生の撮像を完了した。研究目的(3)について、自記式指標を用い、持続的な抑うつ症状を有する大学生は、右眼窩前頭前野体積が減少していることを見出した。過去のうつ病患者におけるケースコントロール研究の結果と類似しており、一般人口中においてうつ病スペクトラムを有する被験者が同様の脳基盤を有する可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学生を対象にした調査は259名のベースライン調査を終え、119名について1年後調査を得た。ベースライン調査において、精神疾患の病名についての意識調査を実施しており、その結果は英文誌に採択された(Koike et al., Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol. in press)。また、1年後調査についても予備解析を進めている。母子調査は、計画研究の橋本龍一郎分担研究者、岡本泰昌分担研究者に指導を受け、プレ調査を15名に対して実施し検証を終えることができた。作成された指標は、平成27年5月に本調査を実施する準備を整えた。259名のうち、50名に対してバイオサンプル計測コースを実施した。バイオサンプル計測コースは、計画研究代表者および西田淳志分担研究者と議論を重ね、可能な限り共通の指標を取得する方向で一致し、東京ティーンコホートで行われている質問票の一部、認知機能課題を共通化し、今後の共同解析や異なる年代での比較検討に応用される見込みである。MRIを取得した中でデータクリーニングが整った40名について予備解析を実施し、主観的な抑うつ症状が持続している群は、そうでない群に比して右眼窩前頭前野の脳体積が小さいことを見出した。同部位はうつ病患者を用いたケースコントロール研究でも異常が指摘されている部位であり、一般募集の大学生を対象とした主観的な評価においても、うつ病に関係する脳病態が反映されている可能性を示唆した。また、思春期に発症する代表的な疾患である統合失調症について、近赤外線スペクトロスコピィによる判別分析が思春期の被験者でも応用可能かどうかを検証し、その結果を英文誌に投稿し、現在査読中である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究全体を通して、計画研究と綿密な連携が実施でき、東京ティーンコホートで行われている質問票の一部、認知機能課題を共通化したうえでバイオサンプル計測コースを実施できている。また、本年度の予定30名を超えた人数を計測しており、当初の計画以上に進展している。母子調査については、今年度に120名の実施を予定していたが、プレ調査の段階で謝金支払方法、指標についての妥当性等を検証していたため、平成27年1月ごろに本調査の準備が完了した。本体1年後調査の日程と重なるため、被験者の負担を避けるために、平成27年5月に実施を延期した。 研究目的(1)については、平成27年5月と10月の二回に分け、メタ認知指標を用いた大学生とその母の調査を実施し、メタ認知指標の確立を目指す。研究目的(2)については、さらに計測をつづけ、合計80名の計測を目指す。研究目的(3)については、引き続き検討を続ける。平成27年9月に1年後調査が完了する見込みであり、データ固定後解析を行い、順次結果を英文誌に投稿していく。母子調査とバイオサンプル計測コースについては、平成27年度も計画通り実施する。得られた結果については班会議で発表し、計画研究代表者および分担研究者と議論を行う。また、共通化した質問票、認知課題について、直接比較を行う。
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Research Products
(9 results)