2014 Fiscal Year Annual Research Report
知覚の時間的連続性を支える脳情報処理:新錯視を用いた心理物理学的分析
Publicly Offered Research
Project Area | The Science of Mental Time: investigation into the past, present, and future |
Project/Area Number |
26119508
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本吉 勇 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (60447034)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 認知心理学 / 時間知覚 / 錯視 / 心理物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々が新たに発見した離散運動錯視の特性を一連の心理物理学実験により検討し,以下の結果を得た.1. 現象は移動する窓の中でキャリア格子が静止あるいは逆方向に一定範囲の速度で運動するときに強く生じる.2. この時空間特性は網膜座標系ではなく身体座標系において決定される.3. 窓の大きさに対してキャリア格子の波長が小さいとき,あるいは窓が輝度エッジを含むときには現象は生じない.4. 等輝度刺激では現象は生じない.これらの結果より,錯覚的な跳躍現象はLGN大細胞系を起源とする,比較的高次の視覚運動処理機構における窓位置とキャリア運動(により指示される位置)の信号の周期的な乖離の解消過程を反映すると考えられた.しかし,別の実験から,5. 跳躍の見かけの時間周波数は刺激の時空間条件に関わらずほぼ4-5 Hzとなることが判明した.錯視は位置信号の乖離の解消を原因としつつも,その主観的な様相は脳内において一定周期で動作する未知のメカニズムにより決定されると考えられる.また,別の実験から,6. 錯覚的な跳躍は刺激の時空間的な定位の正確さを低下させること,7. 主観的な跳躍のリズムは他のリズミックな刺激により引き込まれること,などかわかった.加えて,8. 身体座標系における位置・運動信号の相互作用を検討するため,主観的跳躍を引き起こすような刺激に対するコントラスト感度を測定した結果,その感度特性が空間周波数により定性的に異なることを見出した.1-7については国内学会の優秀賞抄録や班会議において発表し,8は国内学会にて発表,かつ優秀発表賞を受賞,また次年度の国際会議に投稿し採択された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時の二年間の研究計画において予定していたほぼ全ての心理物理学実験と分析をほぼ完了し,かつ当初の計画にはなかった新たな実験を実施し,有益な結果を得ることもできた.なお,実験そのものはおこなったものの発表しなかったデータも数多く蓄積されている.研究の成果は着実かつ戦略的に発表され,国内学会発表賞の受賞,および国際会議への採択へと至っている.なお,原著論文の執筆は既に開始している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,これまでの結果に基づき新たに着想した心理物理学実験を続けるとともに,錯視生起中の脳波を測定することにより神経活動のダイナミクスを解析する.予備実験は既に開始しており,かなり興味深いデータが得られている.この脳波解析により,主観的跳躍の時間周波数を決定していた未知のメカニズムの実像が見えてくると期待される.また,本研究が属する新学術領域計画班の一部と共同で,脳波やMEGとfMRIを組み合わせたより大規模な脳機能イメージング実験を実施することも予定している.この研究では,離散運動錯視のみならず,それにヒントを得た新錯視も提供できることを期待している.これら心理物理・脳波のデータを合わせて,時間的連続性を支える神経計算メカニズムの全容を解明することをめざす.以上の成果は国内外の学会で発表するとともに,複数の原著論文にまとめ国際誌に投稿する.なお,統合脳ネットワーク・シンポジウムなどでの講演もすでに予定している.
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Research Products
(5 results)