研究概要 |
【背景】軟骨無形成症(Ach)は遺伝性四肢短縮型低身長症の中で最も頻度が高く、線維芽細胞増殖因子受容体3型(FGFR3)の活性型変異により著明な低身長をきたす。現在行われている成長ホルモン療法の効果は充分とはいえず、病態生理に基づいた新規治療法の開発が希求されている。これまでに私たちは軟骨株化細胞を用い、Ach型FGFR3変異がPTHrPの発現低下を来たした結果アポトーシスを誘導し、これがPTHrPの補充により阻止されること、type II collagen promoterにより軟骨特異的にAch型変異FGFR3を発現するAchモデルマウス(AchTG)の胎児骨を用いた器官培養にてPTHが骨伸長改善作用を有することを見出した。【目的】Achの骨成長障害に対する短期的および長期的なPTHの効果をモデル動物にて検討する。【短期投与】日齢7〜20日にかけてPTH(100μg/kg,1000μg/kg)を連日皮下注射し、日齢21日に大腿骨を剖出、骨長の計測および組織学的検討を行った。AchTGは野生型と比較し大腿骨の伸長障害を認めた(10.15±0.44mm,11.43±0.27mm,p<0.001)。PTH投与によりAchTGは10.84±0.38mm(100μg/kg p<0.05),10.59±0.20mm(1000μg/kg p<0.05)と骨伸長の改善を認めた。AchTGは成長軟骨板の短縮を認めたが、PTHにより増殖軟骨細胞層を中心に拡大した。【長期投与】生後1〜5週にかけてPTH(100μg/kg)を週3回皮下注射し、日齢42日に上腕骨・橈骨・大腿骨・脛骨を剖出し、同様に評価を行った。AchTGでは全ての骨に伸長障害を認めた。PTH投与によりAchTGにて骨伸長の改善を認めたが、PTHの投与による成長軟骨板の変化は認めなかった。【結論】PTHはモデル動物において軟骨無形成症の骨成長障害を改善し、新規治療薬となる可能性が示された。
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