研究概要 |
要支援高齢者の言語表現の傾向を、その対話相手との関係において理解することが本研究の目的であり、本年度は以下の調査を実施し、分析をした。 1.要支援〜要介護1程度の認定を受けているケアハウス入居者10名に半構造的なインタビューを実施、会話内容を記録、文字化した。さらに、ケアハウス施設内職員(相談員、事務職員、栄養士、介護職員)に対し、先の10名それぞれの話す内容、話し方について抱く印象を調査した。調査対象とした要支援高齢者の言語表現の一般的な傾向として、繰り返し同じ話題をすること(反復)と話題を概念的にまとめずに事実の時系列的な配置によって伝えるエピソード的な語りを抽出できた(常葉短大紀要37号,2006、社会言語科学会第19回発表論文集,2006)。またa)介護系職員よりも事務系職員のほうが、より大きな問題や課題を話すことが多く、それまでに意識的な話題選別の過程があること、b)事務系職員よりも介護系職員のほうが、日常の個別的で感情的な話題(特定の時間場所の話題や噂話や愚痴等)が多く、その分警戒心も強いことがわかった。理由として、a')事務系職員の方が施設管理側に近い利害を表象しやすく、問題が解決されるべき問題として(大きくまたは大げさに)話題にされやすいこと、またb')介護系職員の方がより私的な環境に接しやすく、介助作業の中で会話が進むほうが、話題にかかるバイアスや緊張が低いこと等が、指摘できる。 2.要支援の在宅生活者5名について、その介護(予防)計画を作成しているケアマネージャとの(半構造的なインタビュー時の)会話を調査。 3.要支援のケアハウス入居者5名について、担当の相談員との(半構造的なインタビュー時の)会話を調査。 4.要支援高齢者との対比で、中程度の認知症高齢者とその周囲の人たち(家族、ヘルパー、訪問看護、デイサービススタッフ)の会話を調査。
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