要支援高齢者7名を対象として、ヘルパーとの会話(ヘルプ実施中)を7ケース、ケアマネージヤとの会話(定期訪問と雑談)を6ケース、記録し分析した。 ヘルパーとの会話記録のすべてについて、業務がなされている間、ほぼ休みなく会話が継続されていた。つまり掃除、洗濯等のヘルプは、常に会話とともに実施されていた。その会話内容は、ヘルプ内容と直接関係するもの(依頼、確認、説明等)よりも、関係の無い内容、いわゆる雑談のほうが多かった。雑談の会話内容の特徴としては、回想的なエピソードが多かった。 ヘルパーとの会話とケアマネージャとの会話と比較した場合、ケアマネージャとの会話のほうが、いわゆる雑談よりも、業務に関わる話題に多くの時間が費やされていた。またケアマネージャとの会話内容は、雑談においても、心身のコンディションに関わることが多く、それはケアマネジメントという業務との結びつきを間接的に保っていた。 ヘルパーと高齢者、ケアマネージゃと高齢者、それぞれの間でなされる会話の内容や時間配分に生じる違いは、業務内容の違いを基盤としながら、ヘルパーとケアマネージャそれぞれが作り出す会話の環境の違いに根拠を求めることができる。ケアマネージャとヘルパーでは、利用者に向かい合う姿勢や投げかける言葉に相対的な違いがあり、前者は、対面的で、抽象的・制度的な知識・情報が多く、後者は、動きながら直接顔を向かい合わせることなく、居室内の具体的な個物や高齢者の今の状態(姿勢、気持ち等々)の話題を投げかける。前者は、生活に、医療的・福祉的な知識を利用しながら俯瞰的に眺めるような視線で関わり、後者は、生活に、「いま・ここで、すぐに」取り掛かるべきものとして扱う視線で関わる。これらの相違が、会話内容に表現され、さらに会話の生じる環境を作り出し、会話の内容を方向付けていく。
|