在宅の要支援高齢者と、ヘルパー、ケアマネ、そして家族との会話において、話題の選択や話し方の傾向の違いを理解する。業務中のヘルパーとの会話9ケース、ケアマネとの会話6ケース、家族との会話3ケース(食事と入浴介助時)について生活場面での自然発話を記録し分析した。高齢者宅で介護サービス実施中の談話記録を対象とする研究は、海外でごく少数見られるのみである。「高齢者-ヘルパー」間の会話が、他よりも連続的な会話時間が長く、話題の種類も多いため、「高齢者-ヘルパー」との会話を軸にして、「高齢者-家族」間の会話や「高齢者-ケアマネ」間の会話の特徴を相対的な違いとして示した。「高齢者-ヘルパー」間の会話については、ヘルパー業務実施中の6割から9割程度の時間、何らかの会話がなされていた。その会話内の話題は、ヘルプ業務に直接関連するものと、いわゆる雑談とが、時間的にほぼ同程度であった。雑談が生じる典型的な過程は、業務に必要な話題から始まり、その話題にのぼる居室内の事物からの連想により雑談に移るものである(例えば、台所の排水口の汚れ→自炊の実施状況→外食の頻度→外食に誘う友達、という展開)。一方で、「高齢者-家族」間の会話については、高齢者の居室内ではあまり会話がなく、家族が集まる食事中もヘルパーとの会話ほど話題が広がっていかなかった。この違いの理由として、ひとつには、ヘルパーが、家族のように高齢者との利害関係がなく、高齢者の話す様々な話題を中立的に扱えることと、もうひとつには、ヘルパーが、業務をしながら会話をするために、一文が短く直観的な連想によって連結されていく会話を促しやすいことが想定できる。また「高齢者-ケアマネ」間の会話では、介護予防計画の確認が業務の中心になるため対面的に会話をしており、ひとつの話題が、ヘルパーと話している時よりも、より長くより深い内容になりやすいが、ヘルパーとの会話ほど「友達と話すような」リラックスした会話には移行しにくかった。
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