研究課題/領域番号 |
19K23237
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
岡崎 滋樹 立命館大学, 経済学部, 研究員 (00844317)
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研究期間 (年度) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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キーワード | 戦時期 / 占領地 / 海南島 / 畜産業 / 台湾総督府 / 台湾拓殖株式会社 |
研究実績の概要 |
本課題では、研究計画において示したとおり、①台湾総督府と台湾農民の畜産業をめぐる生産・流通システムの変化・②戦時期台湾総督府の対南方畜産加工品貿易・③戦時期台湾と内地・満洲の畜産物生産構造の再編、という3つの小テーマを設定していた。 本来の計画では、①から順に個別論文の作成・発表をしていく予定であったが、最近の世界情勢による海外渡航禁止という状況もあり、臨機応変に予定を変更せざるを得なかった。しかし、日本にいても十分にこなせる部分は多く、そういった部分から着手し、これまで明らかにされてこなかった史実の掘り起こしに努めた。 その結果として、今期は小テーマで挙げた、②「戦時期台湾総督府の対南方畜産加工品貿易」に関連する主要問題をまとめている。まずは、「海南島占領後の台湾拓殖株式会社の事業獲得と台湾総督府―畜産業の事例から」と題し、2019年12月21日に開催された日本台湾学会第17回関西部会研究会(於:京都光華女子大学)にて研究成果を報告している。そして、そこでの質疑応答で得た知見をまとめ、拙稿「戦時期中国占領地における台湾拓殖株式会社の事業参入と台湾総督府―海南島占領後の畜産業を中心に」(『社会システム研究』第40号、2020年3月、49~84頁)として成果を発表した。 上記の成果では、畜産業というこれまで関心が低かった分野から、戦時期の植民地台湾と中国占領地をめぐる日本の戦時資源開発政策を検討した。具体的には、海南島で海軍省・陸軍省・外務省の現地担当者からなる「三省連絡会議」の指示を受けて、台湾総督府と台湾拓殖株式会社が互いの職権を意識しながら、現地の要望に合わせた畜産政策を樹立していく過程を復元した。この過程は研究史において空白であり、今期の研究はこうした空白を埋めただけでなく、当時日本の戦時期における「帝国農業経済圏の再編」を実証する上で有益な視座を提示したと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況については、上記で説明した通り、新型コロナウイルスの世界的拡大という当初予期しなかった事態が発生したにも関わらず、臨機応変に対応してきた。海外での研究活動が制限される中でも、日本でできる部分を集中的に行い、極めて順調に進展していると言える。これは、当初一つだけのテーマに絞らず、本課題の中にあえて個別テーマを三題設定していたことが幸いした。 研究内容については、既述のとおり個別テーマに沿って順調に研究を進め、そのうちの一題については、すでに学会報告と論文発表を終えている。限られた研究活動ではあるが、今期の研究活動を通じて、今後の発展の可能性を大きく実感しており、意欲的に新たな課題を解決していく所存である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策については、当初の計画で示した課題を大幅に変更することはなく、現状を維持しつつ、新たな課題にも挑戦していく予定である。主に、「戦時期帝国圏畜産業の開発」が中心になるであろうが、現在作成に着手している論文は以下の二稿である。 まずは、「戦時期中国占領地における台湾拓殖株式会社と生豚貿易―海南島豚の対広東取引」であり、ここでは南支地域における主要資源である海南島豚を扱い、台湾拓殖株式会社が広東占領地へ生豚を供給し、畜産の観点から戦時期日本の資源獲得問題を再検討する。今期中には成果をまとめ、発表する予定である。 つぎに、「戦時期中国占領地における獣疫問題―海南島牛疫と資源政策の頓挫」である。本稿では、動物資源の観点から占領地における資源政策の失敗要因を探り、社会科学と自然科学を融合させ、戦時期日本のアジア政策の全貌を補足する。本稿も今期中に成果を発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスが世界的に拡散し、前年度は海外渡航が不可能であったため、今年度あらためて海外研究活動および諸費に充当して、十分な研究活動を実践したい。
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