ヒストンメチル化酵素PR-Set7によるH4リジン20残基のメチル化はゲノム安定性の維持に関わっている。本研究では肝臓特異的にこの酵素を欠いたマウスを作成した。胎児期の欠失では肝自体の形成が阻害され、生後の欠失では肝細胞壊死に引き続き周囲の炎症、線維化、周辺細胞の代償性増殖が誘発された。さらに肝細胞の壊死と再生が繰返され、癌遺伝子STAT3が活性化された結果、肝臓癌が発生した。この中には自己複製能を有し免疫欠損マウスへ移植が可能で、肝細胞と異なる分化能をもつ癌幹細胞が含まれていた。遺伝子発現解析では胆管上皮前駆細胞および癌関連遺伝子の発現がみられ、肝臓癌発生の新たな経路を見出す成果となった。
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