Research Abstract |
いわゆるARDS(成人型呼吸窮迫症候群)は様々な要因で発生し、なかでも好中球の関与が注目されている。今回われわれは好中球遊走能を有するInterleukin 8(IL8)が好中球を介してARDS発症に関与しているのではないかと仮説をたて、家兎モデルを用いIL8静脈内投与の動脈血液ガスに対する影響を調べた。 【方法】対象は家兎。ペントバルビタール静注(10mg/kg)にて麻酔、気管切開を行った。筋弛緩薬投与下、高頻度オッシレーション換気(HFOV)を施行した。換気条件は吸入酸素濃度21%,一回換気量8ml,平均気道内圧3cmH_2O,呼吸回数15Hzとした。血液ガス安定ののち、IL8(8mug/kg)を静注し,動脈血液ガス,末梢血中の白血球数の推移を調べた。最後に開胸,肺動脈からホルマリンを注入,肺を固定,HE染色を行った。 【結果およびまとめ】IL8投与1分後からPaO_2は有意に減少したが,その低下は軽度で一過性であり投与20分後には前値に回復した。白血球数は投与1分後から10分後にかけて著明に減少した。その後増加傾向に転じ投与30分後には前値を上回った。病理標本では好中球が肺胞間隔壁に集積していたが肺水腫や線維化の所見は認められなかった。胸部CT像にも著明な変化は認められなかった。 好中球はARDSや臓器障害を引き起こすことが知られており,一方IL8は好中球を活性化する。IL8静注により末梢血白血球数が著明に減少したが,これは好中球の粘着能が亢進,肺に集積したためと考えられた。ただし肺に白血球の集積はみられたものの血液ガス悪化は軽度,一過性で,肺障害には他の因子も関与していることが示唆された。
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