Research Abstract |
(背景)乳癌の予後因子は現在,リンパ節転移の状態が最強の因子である.しかし,リンパ節転移を認めない症例からも約20%が遠隔転移をきたすという事実から,さらなる予後因子としてさまざまな癌遺伝子,癌抑制遺伝子,血管新生因子等が検討されると同時に骨髄の微小転移を検出する試みがなされてきた.しかし現在広く行われている免疫細胞学的検出方法は骨髄の穿刺個所が多く,煩雑である.そこでこの研究では,乳癌に過剰発現するたんぱくであるMUCImRNAとKeratin 19mRNAを標的として蛍光probeを使った定量RT-PCR法にて乳癌の骨髄微小転移の検出とその予後を検討した. (対象方法)平均経過観察期間3年,対象は遠隔転移を認めない手術患者40名とした.Controlとして健常人10名のMUCImRNAとKeratin 19mRNAの発現量を測定しその平均値+2×漂準偏差をcut-off値とした. 術直後片側の前腸骨より骨髄を5ml穿刺吸引し,分離した単核球層から全RNAを抽出した.逆転写後,一つの蛍光probeと二つのprimerを使用して定量PCRを施行した. 解析は7700 sequence detectorで行った. (結果)検出感度は乳癌細胞株MCF7を使用し,1/10^6であった. 乳癌患者の骨髄中においてCut-off値以上の症例はMUCI 53% Keratin19 36%であった.Stage,腫瘍径,リンパ節の有無別にMUCI,Keratin19の定量値を検討すると,病期がすすむごとにそれらの中央値および平均値は上昇するが、分散は有意差を認めなかった.多変量解析にてリンパ節転移,腫瘍径とした従来の予後因子と比較すると微小転移の有無は独立した因子として有意差を認めた. (結論)本方法における微小転移の検出は予後予測に有意義であった.
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