Budget Amount *help |
¥2,300,000 (Direct Cost: ¥2,300,000)
Fiscal Year 2000: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 1999: ¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
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Research Abstract |
我々が樹立した高度腹膜転移胃癌株MKN-45-Pを用いて腹膜播種の分子機構の解明、新治療法の開発を行った。平成11-12年度の研究で腹膜播種は原発巣漿膜から離脱した腹腔内遊離癌細胞が3種類の転移経路を経て形成されることを明らかにした。すなわち、遊離癌細胞の転移経路として乳班や横隔膜にあるリンパ管基始(小孔、stomata)から中皮下リンパ腔に進入する経リンパ行性転移、腹膜に直接接着する経腹膜転移及び卵巣転移の3経路である。経リンパ行性転移では脈管外通液路としての生理的な腹腔内液の流れにのり癌細胞がリンパ腔に達するので早期に転移が完成する。リンパ腔内に進入したあとは経腹膜転移と同じ過程で播種が形成される。さらに経腹膜転移は以下に述べる多段階的な経過を経て形成される。1)腹膜中皮に接着,2)サイトカインによるクロストークで中皮、内皮が収縮,基底膜が露出,3)基底膜に癌細胞が強く接着,4)中皮下間質へ浸潤,5)癌の増殖と血管、間質の誘導で播種が完成する。この過程がとどこうりなく進行するにはおのおのの過程の成立に必要な分子が多段階的に発現されなければならない。特に重要な分子として、接着因子(E-cadherin,Integrin)、運動因子(AMF/AMFR,HGF/MET,MTS1)、マトリックス分解酵素(MMP7,MT1-MMP,urokinase,とその受容体)、血管・リンパ管増殖因子(VEGF,VEGF-C)などが同定された。このようにして完成された腹膜播種は複数の転移関連遺伝子が同時に発現している。したがって単一の分子を標的とした治療では腹膜播種を抑えることはできない。そこで複数の転移関連遺伝子,(c-met,integrin,VEGFなど)の転写因子であるc-etsの発現をアンチセンスDNAで制御するとヌードマウス腹膜播種がコントロールできた。また、新規制癌剤エチニルシチジン、CNDAC(デオキシチジン誘導体)の腹腔内投与により腹膜播種モデル動物の生存率が有意に改善された。 以上より将来複数の遺伝子を同時に制御する遺伝子治療が必要と考えられた。複数の腹膜播種関連遺伝子の転写因子であるc-etsを制御する方法は有望な戦略の一つになると推測された。またデオキシチジン誘導体の腹腔内投与は近い将来臨床応用できるであろう。
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