Research Abstract |
これまで申請者は, 残留性有機汚染物質である有気汚染物質Perfluorinated Compounds (PFCs : PFHxS, PFOS, PFOA, PFNA, PFDA, PFUnDA, PFDoA, PFTrDA)曝露による子どもの発育影響について, PFOS, PFOAより炭素鎖が長いPFCs (PFNA, PFUnDA, PFTrDA)と出生時体重に有意な負の関連また, 性差があることを報告した。 低出生体重(LBW ; 2500g未満)で生まれた児は, 成人後の生活習慣病の発症リスクが上昇するといわれていることから(Barker仮説), PFCs曝露によるLBWへの影響について検討した。北海道全域37病院妊婦健診を受けた妊婦とその児を対象に2003年2月から参加を呼びかけ32,900人中17,869人(参加登録率 : 54.3%)を登録した。この17,869人に対して各年から対象者をランダムに抽出した結果, 最終的に1,986名を対象とした。研究参加登録時に妊娠時の年齢, 既往歴などの質問を含んだ自記式質問票への回答を依頼し, 出産記録は病院から入手, PFCs濃度はLC/MS/MSにより測定を行った。統計解析は, PFCsを四分位にし, 母体血中の8種類のPFCs濃度とLBWとの関連についてはロジステック回帰分析を行った。交絡因子の調整は, 出産時の母親の年齢, 母親の妊娠前BMI, 出産回数, 在胎週数, 児の性別, 母親の教育歴, 妊娠後期血漿コチニン濃度, 妊娠初期の飲酒歴で調整を行った。すべての統計解析には, JMP for Windows, version 9.0を用い, P値が0.05未満の場合に統計学的に有意な差を認めるとした。その結果, LBWの児は96名であった。PFTrDAにおいては第一四分位(reference)に対して第四四分位で2.5倍有意にリスクが上昇したが, その他のPFCsについては影響が認められなかった。そこで, 高濃度曝露によるLBWへの影響を検討するために, 75%タイル値までをreferenceとし, 75-90%タイル値, 90%タイル値以上の3分位で分類し, ロジステック回帰分析を行った。その結果, PFNAはreferenceに対して第三四分位でリスクは2.1倍上昇, さらにその有意な関連は男児で顕著であり, 第三四分位でリスクは3.2倍上昇した。PFDAでも全児においてreferenceに対して第三四分位でリスクは2.2倍上昇した。PFUnDA, PFTrDAにおいても全児では, referenceに対して第三四分位でリスクは共に2.1倍上昇し, 性別で層別した結果, 女児のみで第三四分位においてリスクが2.5, 3.0倍それぞれ上昇した。PFCs濃度と出生時身長については, PFNAのみにおいて負の関連が示され(p=0.003), その関連は男児に認められた(p=0.014)。 本研究結果により, 日常生活レベルのPFCs曝露が胎児の発育に悪影響を及ぼすことが示された。そこで, 胎児期曝露による出生後の影響について検討を行った。研究対象者は, 出生時体重の影響を検討した1,985名。統計解析はPFCsをlog変換し, 母体血中の8種類のPFCs濃度と生後18か月の影響について重回帰分析を行った。その結果, PFCs曝露は出生時体重には負の影響を及ぼしていたが, 18か月ではその影響は消失していた。胎児期のPFOA曝露は, 成人後の肥満のリスクになっている事が報告されていることから, さらなる追跡が必要であると考えられる。
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