Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
研究目的:レチノイン酸(RA)は細胞の分化・増殖において重要な因子であり、様々な癌細胞の増殖抑制効果が認められている。成人T細胞白血病(ATL)においても、レチノイン酸の一つである全トランスレチノイン酸(ATRA)による増殖抑制効果を報告しており、その作用機序について検討する。研究方法:(1)ATRAにより誘導される増殖抑制因子の作用を検討するために、現在までATRAにより誘導されると報告されているTGF-β、IFN-γ、TNF-αをHTLV-I感染細胞株に添加し増殖能の変化をMTS assayで検討する。(2)ATL細胞において恒常的に発現しているNF-κB活性をHTLV-I感染細胞株に対するATRA添加の有無により比較検討する(CAT assay)。(3)ATL細胞の増殖に活発なウィルス複製が関与していることも考えられるため、ATRA添加の有無によりHTLV-I proviral DNA loadをreal-time PCRで比較検討する。研究成果:(1)増殖抑制因子添加によるHTLV-1感染細胞の増殖抑制効果は認められなかった。(2)ATRA添加によりHTLV-I感染細胞におけるNF-κB活性の抑制が認められた。(3)ATRA添加によるHTLV-I感染細胞においてHTLV-I proviral DNA loadの低下が認められた。考察:ATRAのHTLV-I感染細胞に対する増殖抑制効果の作用機序として増殖抑制因子の関与は否定的であるが、NF-κB活性の抑制作用があり、さらにはウィルス複製抑制効果も認められた。今後、ATRAがATLの治療において臨床応用可能かどうかも検討していく予定である。
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