Research Project
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
本研究は、一品生産職場における熟練を構成する要素を確定すること、及び技術革新など作業に影響を及ぼすとおぼしき外的要因が変遷したとき、上記要素がいかなる変容を遂げるか解明することを目的とする。対象は九州地方に立地、伝統的建造技術を用いて木造船を建造するX社および最新技術を用いて鋼船を建造するY社である。それぞれにおいて作業研究を実施した後、得たデータをMANOVAに供した。結果、以下に示す点が明らかになった。第一に、たしかに技術革新は発生していた。船殻材料や工法において幾度か技術革新を経験していることが文献から明らかになったし、作業者による作業時間配分から、技術革新が発生したことがうかがえた。こうした過程で、現業部門が担当する作業において稼働率が向上したことが観測された。第二、技術革新前後において作業者が示す行動は変化していなかった。技術革新前後いずれにおいても作業者が準備作業に相当な時間を費やしていることが観測された。また作業者による主作業および付随作業時間分布には、専門的にも統計的にも有意差が見いだされなかった。第三に、熟練作業者とは、担当する作業全体を設計・施工・管理できる人物であることが明らかになった。以上のことかち本研究は、作業者が有する熟練要素は技術革新という外的要因変動前後において変容しなかったことを明らかにした。こうした現象は、熟練要素が外的変動に影響を受けない固定要素と、影響を受ける変動要素とに分けられることから発生すると推測される。また、熟練要素がこうした特性を有することから、訓練制度変更は慎重に進めるべきであるし、変更するならば職務分析を実行しつつ、教育訓練によって付与する熟練要素が有する性質を検討してから実行するべきであるという結論を得た。
All 2008
All Journal Article (1 results)
長崎大学経済学部研究年報 24
Pages: 29-50