地域施設の既存建築ストックの立地価値を評価する指標の社会的意義と計画の特性の解明
Project/Area Number |
18K04485
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 23030:Architectural planning and city planning-related
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
吉川 徹 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 教授 (90211656)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
|
Budget Amount *help |
¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,820,000 (Direct Cost: ¥1,400,000、Indirect Cost: ¥420,000)
Fiscal Year 2018: ¥780,000 (Direct Cost: ¥600,000、Indirect Cost: ¥180,000)
|
Keywords | 期待利用者数 / 離散選択モデル / 地域施設 / 公共施設 / 最適施設配置 / アクセシビリティ / ロジットモデル / 多摩ニュータウン / 消費者余剰 / 平均利用距離 |
Outline of Annual Research Achievements |
既存建築ストックの活用と地域公共施設の再配置は,我が国にとって喫緊の課題である.この課題の解決には立地条件を考慮した地域公共建築物の価値の簡便な評価手法が必要とされるのに対して,立地を詳細に組み込んだ評価手法の研究は少ない.そこで研究代表者は2015年度より,コミュニティセンター等の利用率が距離減衰する施設に着目し,理論的,実証的分析を行ってきた.この成果に立脚して,本申請課題は,立地に偏りのある施設ストックの立地価値を,利用率が利用距離などによって減衰する希望者利用型の需要を前提として定量的に評価する手法の開発を目指している.このため,平均利用距離,消費者余剰,期待利用者数という3種類の指標を対象として,社会的意義と,得られる地域施設再編成計画の特性を明らかにすることを目的とする. 本年度は,この目的に向け,下記の研究を行った.第一に,上記の社会的背景に述べた問題が顕在化している,首都圏郊外の計画開発住宅地である多摩ニュータウンの最初期開発地である諏訪・永山地区において,少子高齢化の進展によって余剰が顕在化した小学校の校舎に,高齢化とライフスタイルの多様化によってその社会的意義が再定義されつつあるコミュニティセンターを設置することを想定したシミュレーションの結果について,建築物の評価指標を中長期的な観点から算出する方法について枠組みを整理した.具体的には,これまでに明らかにした価値評価指標の挙動を踏まえて,中長期的な撤去の進展を考慮して撤去シナリオにおける通算価値評価の枠組みを整理する作業に着手した.この作業によって,本研究課題の目的である立地条件を考慮した地域公共建築物の価値の簡便な評価手法について具体像を提案することが可能になる.第二に,成果を取りまとめて発表するために,これまでの学会発表の全体の総括に着手した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実際の対象地域への適用については,これまでに構築した,簡易に計算が可能なシステムを改良して,多くの撤去シナリオに簡単に対応できるように整えた.合わせて上記の通り,これまでに明らかにした価値評価指標の挙動を踏まえて,中長期的な撤去の進展を考慮して撤去シナリオにおける通算価値評価の枠組みを整理することに着手した結果として,これまでに下記の成果が得られた. 建築物のうち1件を撤去する場合には,上記の指標のうちいずれかを用いて,最も利便性の低下が軽微である建築物を撤去することが妥当であり,利便性低下量が価値評価指標となる.しかし,地域公共建築物を撤去する場合には,中長期的に複数の建築物の撤去が進展する場合がよく見られることから,これを考慮した評価が求められる.このためには中長期的な撤去シナリオを想定する必要がある.このシナリオとしては,施設を順次増設する場合についての先行研究が提案したシナリオを撤去に適用した研究代代表者等による提案である,逐次評価型(近視眼的最適化),最終評価型(完成時最適化),総合評価型(全期間の通算最適化)が参考になる.さらに,ゲーム理論を応用して,あらゆる撤去シナリオを対象とすることも考えられる. これらのシナリオの中でも本年度は,もっとも簡明であり,かつ将来が予測し難い場合にしばしば採用される逐次評価型シナリオによる中長期的な撤去を想定した.この際の価値評価指標としては,建築物が多数存在する最初期から,撤去が順次進んで建築物が1件となった最終期までを考えて,各期の最初期からの利便性の低下を通算して平均したものを用いる.これは,逐次評価型シナリオによる撤去を,各期の重みを等しくした総合評価型シナリオの価値評価指標で評価することに相当する. この枠組みの整理により,これまで課題であった中長期的な観点を織り込んだ建築物の価値評価が可能になる見通しが得られた.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,これまで明らかになった新たな可能性について引き続き検討することによって,研究成果の最終的なまとめを行う. 第一に,「消費者余剰」と「期待利用者数」の社会的意義を明確化するため,従来の立地ポテンシャルと本研究課題の評価指標との違いと類似性について明らかになってことを意識しつつ,上記の中長期的な撤去のシナリオの枠組みの整理結果に基づき,中長期的な撤去の進展を考慮して撤去シナリオにおける通算価値評価の具体像を整理し,その定式化を行う.この際には,研究代表者による既往研究においては,消費者余剰に比べて期待利用者数の方が,公平性が高い最適施設配置をもたらす可能性があることを指摘し,さらに実際の対象地域への適用でもその傾向が確かめられたことを考慮する.すなわち,消費者余剰に関する最適施設配置が期待利用者数の観点からはどう評価できるのか,その逆の場合はどうかについて,通算価値評価の観点から分析する.さらに,ゲーム理論を応用して,あらゆる撤去シナリオを対象とすることについても,その実現可能性を探求する.以上を整理し,最終的なまとめを行う予定である. 第二に,多摩ニュータウンにおけるシミュレーションを深化させる.研究代表者は,既往研究において,諏訪・永山地区における小・中学校の統廃合の実態と平均利用距離最小化による最適施設配置の比較を行った.この際は,最適施設配置は候補地を限定しなかったため,遺伝的アルゴリズムを用いている.しかし本研究課題においては,そもそも施設の候補地が既存の地域公共建築物に限定されるため,この点ではより簡素なシミュレーションによって結果が得られる.これを踏まえて,新年度は多数の撤去シナリオを効率的に比較するシステムを構築することを予定している.これらの結果を受けて,最終的なまとめを行う.
|
Report
(5 results)
Research Products
(13 results)