国際的な気候変動対策をめざす合意形成枠組み設計の研究-先進国と途上国の関係を軸に
Project/Area Number |
18K11756
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 64060:Environmental policy and social systems-related
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
新澤 秀則 兵庫県立大学, 社会科学研究科, 教授 (40172605)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 晴雄 兵庫県立大学, 社会科学研究科, 客員研究員(教授) (10144396)
秋田 次郎 東北大学, 経済学研究科, 教授 (10302069)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥4,290,000 (Direct Cost: ¥3,300,000、Indirect Cost: ¥990,000)
Fiscal Year 2020: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
Fiscal Year 2018: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | パリ協定 / 国際的合意形成 / 先進国対途上国 / 国際交渉の動学性 / 経済理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の第1の目的である、国際合意を実現するための国際的政策オプションの検討に関して、本研究は、パリ協定における各国の緩和貢献目標の多様性に着目し、それがパリ協定の成果に与える効果・影響について研究している。2022年度は、2021年11月に行われたパリ協定第3回締約国会議で運用ルールがおおかた決定したパリ協定第6条2項と4項の市場メカニズムについて、その特徴を分析した。その結果、京都議定書の3つの市場メカニズムとは異なる特徴があることがわかった。例えば、多様な緩和貢献目標をもつ国家間で市場メカニズムを機能させるために、京都議定書のように排出権を移転するのではなく、取引前後で国家間の排出量を調整するという方法が採用された。排出権の創出方法として、ベースライン排出量に対して削減された排出量を計算するという方法が主で、これは京都議定書のクリーン開発メカニズム使われていた方法と同じで、取引にかかるコストが大きい。6条2項では、国ごとの排出権取引を接続することが可能だと認識されているが、多様な緩和貢献目標のもとで目標達成を損なわないように実施することの課題を認識した。 本研究の第2の目的である、パリ協定がもたらす長期的な目標達成インセンティブの動学的な交渉分析による解明については、自ら開発した京都議定書を想定した二段階交渉モデル(第1段階で排出量目標を持つ国と持たない国が存在し、排出量目標を持たない国での排出量削減によって生み出された一種の排出権を排出量目標を持つ国に移転し、第2段階ですべての国が排出量目標を持つようになる)に基づきながら、パリ協定での一特質である途上国をも不完全ながら包摂した交渉モデルへの拡張の作業を継続して行い、将来と現在の便益の相対比等の変動等、パラメーターの変化に対して、結果が突然変化するといった、これまでに得ている結果が広い範囲で適用可能なことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第1の研究目的である京都議定書と異なるパリ協定の新たな試みが、合意形成にどのように影響するかの分析については、昨年「今後の研究の推進方策」に書いた項目のうち、パリ協定第6条の市場メカニズムの特徴の把握は、研究実績の概要に記したように一定の進捗を達成した。しかし、2021年CO26に至る2030年目標の更新のメカニズムの分析については更新の内容の把握にとどまり、また、今後の目標強化に重要な役割を果たす共通表を使った報告、審査、多国間検討プロセスや2021年から始まったグーバルストックテイクの成果と課題の把握については、それらが本研究と同時進行しているために、資料収集と状況把握にとどまっている。 本研究の第2の目的であるパリ協定がもたらす長期的な目標達成インセンティブの動学的な交渉分析による解明については、パリ協定の特徴を理論モデルにとりこむ上で、第1の研究目的と関係するが、プレッジアンドレビューのなかのレビューの機能が未だ明確ではないことなど、残された課題の解決にかなりの作業を必要とすることが見込まれている。一方、民間でのSDG投資等でパリ協定クレジットを利用するなど、必ずしも現在の解釈が妥当でない場合が出現する可能性も考慮している。また、実際には諸国間で交渉結果は対称的では無く、非対称性を説明するモデルとして、交渉力内生化モデルを考えることができる。モデルに交渉力を内生化することについても、短縮した論文をまとめる作業の途次にある。
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Strategy for Future Research Activity |
第1の研究目的である京都議定書と異なるパリ協定の新たな試みが、合意形成にどのように影響するかの分析については、共通表を使った報告、審査、多国間検討プロセスや、2023年12月に実施されるパリ協定第5回締約国会議で終了する第1回グローバルストックテイクの実施の状況を把握し、その成果と課題を明らかにし、また第2の研究目的に対してインプットを行う。第2の目的であるパリ協定がもたらす長期的な目標達成インセンティブの動学的な交渉分析による解明については、交渉モデルに交渉力を内生化することに加えて、昨年のCOP27での損失と被害に関する合意のような内容を具体的に定めない合意に対してもこの分析が適用でいないかなどの、応用範囲の拡張を図る。 2022年度は代表者と分担者のみによる研究会に専念したが、2023年度は、引き続き内部的な研究会を開催しつつも、それに加えて交渉担当者等を招聘する研究会も再開し、我々の認識や評価についての評価を聞く機会を設ける。 研究成果のとりまとめについては、第1の研究目的の成果から第2の研究目的への還元を行いつつ、大きくなりすぎた課題の一部を迂回して、そのもとで得られる結果を公表する作業を中心にする。
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Report
(5 results)
Research Products
(4 results)