Project/Area Number |
19H03429
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 48040:Medical biochemistry-related
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
浜本 隆二 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 分野長 (80321800)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2023)
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Budget Amount *help |
¥17,290,000 (Direct Cost: ¥13,300,000、Indirect Cost: ¥3,990,000)
Fiscal Year 2023: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2022: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2021: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2020: ¥3,380,000 (Direct Cost: ¥2,600,000、Indirect Cost: ¥780,000)
Fiscal Year 2019: ¥3,770,000 (Direct Cost: ¥2,900,000、Indirect Cost: ¥870,000)
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Keywords | がん抑制遺伝子 / ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤 / PRELP / 併用療法 / SLRP family / トランスクリプトーム解析 / パスウェイ解析 / OMD / 分泌型プロテオグリカン |
Outline of Research at the Start |
分泌型プロテオグリカンであるOMDとPRELPは、我々ががん抑制機能を保持していることを初めて発見した新規がん抑制遺伝子で、その機能や発現調節機構に関しては、依然不明な点が多い。そこで本研究においては、これら新規がん抑制遺伝子の機能を、トランスクリプトーム解析及びシステムバイオロジーの観点から統合的に解析し、さらに分子生物学や生化学的手法を用いて詳細な機能の解明を行うことを目的としている。発現調節に関しては、データベース検索、ヒストン修飾解析を行い、OMD及びPRELP遺伝子の発現抑制メカニズムを包括的に解析する予定である。さらに、臨床応用への可能性に関しても、検討を行う予定である。
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Outline of Annual Research Achievements |
SLRP familyであるOMDとPRELPは、研究代表者のグループががん抑制機能を保持していることを初めて発見した新規がん抑制遺伝子で、その機能や発現調節機構に関しては、依然不明な点が多い。そこで本研究課題においては、これら新規がん抑制遺伝子の機能を、システムバイオロジーに基づき統合的に解析し、さらに分子生物学や生化学的手法を用いてOMD及びPRELPの詳細な機能解析を行ってきた。2020年度には膀胱がんに関する成果をまとめてCancers誌に論文発表も行っている(Cancers, 12, 3362 [2020])。これまで、OMD遺伝子が配座される染色体上の領域9q22は、膀胱がんで高頻度に欠失が観察される領域であることが分かっていたが、PRELP遺伝子に関しては発現抑制のメカニズムは分かっていなかった。そこで、PRELP遺伝子の膀胱がんにおける発現抑制機能を解明することを目的に研究を進め、2022年度にはその成果を論文化した。論文の主旨であるが、我々は様々なヒストン修飾酵素阻害剤を複数の膀胱がん細胞株に処理をして、PRELP遺伝子の発現解析を行ったところ、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を処理することで、PRELPの発現が上昇することを突き止めた。また、ChIP-qPCR解析により、PRELP遺伝子プロモーター領域のヒストンH2Bのリジン残基5のアセチル化が、PRELP発現抑制解除のマーカーであることを見出した。さらに、既に皮膚T細胞性リンパ腫の治療薬として承認されているSAHAを抗がん剤cisplatinと併用して膀胱がん細胞株に処理したところ、効果的に膀胱がん細胞の増殖を抑制することに成功した。これらの成果はClinical Epigenetics誌(Clinical Epigenetics, 14, 147 [2022])に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでの進捗状況であるが、まずOMDとPRELPが膀胱上皮の傘細胞に特異的に発現しており、早期からのすべての膀胱がんや様々な上皮性癌でその発現レベルが劇的に低下していることを発見した。また、膀胱がん細胞株を用いた遺伝子発現プロファイリングなどのin vitro研究では、OMDまたはPRELPの発現により、TGF-βおよびEGF経路が阻害され、EMTが逆転し、細胞-細胞間の接着が活性化され、様々な発がん経路が阻害されることで、がんの進行が抑制されることを明らかにした。これらの成果は2020年度に論文発表をしている(Cancers, 12, 3362 [2020])。また、ヒストンH2BK5のアセチル化が、PRELP発現抑制解除のマーカーであることを突き止め、ヒストン脱アセチル化酵素がPRELPの機能を部分的に制御し、膀胱がんの発生や進行を抑制するメカニズムを明らかにした。重要な点として、既に皮膚T細胞性リンパ腫の治療薬として承認されているSAHAを抗がん剤cisplatinと併用して膀胱がん細胞株に処理することで、効果的に膀胱がん細胞の増殖が抑制されることから、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤であるSAHAとcisplatinは、膀胱がんに対する新規併用療法となる可能性が示唆された。これらの成果は、2022年度に論文発表している(Clinical Epigenetics, 14, 147 [2022])。同じく2022年度には、PRELPの卵巣明細胞がんにおける機能を解明し、論文発表するとともに(J Pers Med. 2022 12(12):1999)、PRELPは細胞間接着とEMTを制御し、網膜芽細胞腫の進行を抑制することを証明し、論文発表している(Cancers. 2022 14(19): 4926)。これらの結果から当初の計画以上に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究戦略であるが、研究計画書に記載している臨床応用を志向した研究に関して、主に3つの戦略に基づき研究を推進していく。一番目としては、我々はリコンビナントPRELPを既に取得しているため、タンパク質性医薬品の創製を志向した、リコンビナントPRELPを用いた腫瘍抑制効果に焦点を当てた研究を行っていく。二番目としては、2022年度の成果からヒストン脱アセチル化酵素阻害剤が、PRELPの発現を上昇させるとともに、既に皮膚T細胞性リンパ腫の治療薬として承認されているヒストン脱アセチル化酵素阻害剤・SAHA(Vorinostat)を抗がん剤cisplatinと併用して膀胱がん細胞株に処理することで、効果的に膀胱がん細胞の増殖を抑制することを確認している。そこで、膀胱がんにおけるSAHA(Vorinostat)とcisplatinを用いた併用療法の可能性を、in vivoにおいて確認することを目標に、準備を進めていく。三番目としては、これまでの我々の研究成果より、PRELPは膀胱がんのみならず様々ながんで発現が抑制されていることが分かっている。実際、2022年度に論文発表した成果より、卵巣がんや網膜芽細胞腫において、PRELPが腫瘍抑制能を保持していうることも既に証明している。今後は卵巣がんや網膜芽細胞腫を中心に様々ながん種に対する、SAHA(Vorinostat)とcisplatinを用いた併用療法適用の可能性を検証していく予定である。我々の研究成果から、PRELPは多くのがん種において、その発現が有意に低下していることから、PRELPを標的とした治療戦略は、多くのがん種に対して適応できる可能性があると判断している。
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