時間反転対称性を破るカイラル超伝導体の輸送現象および端状態の研究
Project/Area Number |
19K03724
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Section | 一般 |
Review Section |
Basic Section 13030:Magnetism, superconductivity and strongly correlated systems-related
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
今井 剛樹 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (10396666)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,510,000 (Direct Cost: ¥2,700,000、Indirect Cost: ¥810,000)
Fiscal Year 2022: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2020: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,040,000 (Direct Cost: ¥800,000、Indirect Cost: ¥240,000)
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Keywords | カイラル超伝導体 / トポロジカル絶縁体・超伝導体 / トポロジカル超伝導体 / 時間反転対称性の破れた超伝導体 / 強相関電子系 / 第一原理計算 |
Outline of Research at the Start |
超伝導現象は物性物理学の中心的なテーマの一つであるが、近年、系の状態を表す波動関数がトポロジカルに非自明な構造をもつカイラル超伝導体は次世代高機能材料の観点からも大きな関心を集めている。本研究ではこれらのカイラル超伝導体に対して,第一原理計算手法と多体電子論的手法の両者を駆使して系のトポロジカルな性質や超伝導機構などを微視的観点から明らかにし,物性評価および新奇物質開発の指針を提案することを目指す。
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Outline of Annual Research Achievements |
トポロジカル超伝導体の有力候補の一つである,時間反転対称性の破れたカイラル超伝導体は試料表面近傍に端状態が出現し,ゼロ磁場下で自発的に電荷流を流すという顕著な特徴をもつ。現在実験サイドによる活発な探索が進められており,並行して理論側からの新奇物質開発に関わる提案,支援を行うことは極めて重要な課題である。本研究では複数の時間反転対称性の破れた超伝導体の候補物質を念頭に、超伝導秩序変数ならびにトポロジカルな特性に対する理論解析を行っている。 2022年度はSrPtSb型ハニカム型結晶構造をもつBaPtSbおよびBaPtAsを対象にその電子状態の同定,微視的模型の構築ならびに常伝導相,超伝導相における性質について議論した。両者は同じ結晶群に属しており特にBaPtSbに対するミュオンスピン回転/緩和/共鳴に関する予備実験では超伝導状態で内部磁場の出現が報告されるなど,時間反転対称性の破れた超伝導状態が出現していることが示唆される一方で、BaPtSbおよびBaPtAsの混晶系ではSbとAsの比率を変更した際に転移温度に非単調な変化が見られている。 そのため両物質の相違を明確にすることは時間反転対称性の破れた超伝導体の理解に貢献するものである。両者の電子状態を第一原理計算手法により詳細に見積もり,その結果を基にして微視的観点から解析を進めるべく有効模型の構築を行った。さらに有効模型を出発点に相関関数を計算し、低エネルギー電子状態の物性への影響について,両物質の相違を与えるものを評価した。またBaPtSbの超伝導相におけるペアリング対称性についても理論的に分類を与え、時間反転対称性の破れたカイラルd波型が安定化する可能性を議論している。上記の研究に関して,これまで得られた成果の一部は日本物理学会,研究会,国際会議およびその会議プロシーディングスなどですでに公表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年4月の研究開始後,研究に必要な資材として,複数台のコンピュータを導入してクラスター計算機環境の構築を行っている。特に第一原理計算手法による大規模な解析に対し大きな威力を発揮しつつある。 まず当初の研究計画である時間反転対称性の破れた超伝導の可能性のあるSr2RuO4を念頭に置いた超伝導相のトポロジカルな性質への伸張圧縮効果について,第一原理計算手法ならびに多体電子論的手法を活用し,圧力効果と超伝導状態の秩序変数との係わり合いを議論した。さらに端電流および熱ホール伝導度などの観測可能な物理量に対する実験結果との対応関係を示すことにより,対波動関数の同定などに関する物性評価の指針を提示し,その詳細を学術論文として報告している。 時間反転対称性を破る超伝導体の候補物質の一つであるSrPtAsについても核磁気共鳴実験などによる結果と超伝導状態の秩序変数との対応関係について現象論的アプローチによる議論を行い,時間反転対称性が破れた超伝導状態が出現する可能性を議論した。さらに上記のSrPtAsと類似のハニカム型結晶構造をとる超伝導体BaPtSb,BaPtAsなどの物質群にも研究を拡張して包括的に時間反転対称性を破る超伝導体の理解を試みている。そこでは第一原理計算手法を用いて詳細な電子状態を求め,微視的アプローチの出発点となる低エネルギー有効模型の構築を行った。さらにその有効模型から出発してその物性に本質的に寄与するゆらぎを評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は引き続き時間反転対称性を破るカイラル超伝導の有力な候補物質であるSrPtAsならびに類似の結晶構造をもつ超伝導体であるBaPtSb、BaPtAsなどに対し,微視的観点から理論的解析を遂行する。同一の空間群をもつ結晶構造(空間群187)であるBaPtSbならびにBaPtAsの超伝導状態の相違点について詳細に議論する。さらにBaPtAsは上記とは異なる空間群をもつハニカム型結晶系での超伝導状態の出現が報告されており,結晶構造の系の物性に及ぼす影響についても並行して議論を進め,ハニカム型格子構造をもつ系の超伝導状態についての包括的な理解を進展させる。 具体的には第一原理計算手法を活用して構築した微視的な低エネルギー有効模型を用い,多体電子論的手法をも活用して,常伝導相ならびに超伝導相について特に物性への寄与を及ぼす低エネルギー電子構造の同定,ならびに対波動関数の対称性と,電子構造の関連性についての研究を引き続き遂行する。さらに輸送特性ならびに超伝導相におけるその秩序変数とトポロジカルな性質の関わり合いに対する議論を継続する。さらに遷移金属酸化物を念頭に新規超伝導体・磁性体の探索についても第一原理計算手法などを用いて引き続き遂行し,新規物質の物性評価を行う予定である。また大規模な数値計算が想定されるため,必要に応じて計算機環境も更新を図ることを想定している。
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Report
(4 results)
Research Products
(19 results)