草双紙史の再構築に関する研究-18世紀の装丁様式からみえる出板活動と享受の実態
Project/Area Number |
19K13062
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Research Category |
Grant-in-Aid for Early-Career Scientists
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Basic Section 02010:Japanese literature-related
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Research Institution | Jissen Women's University |
Principal Investigator |
松原 哲子 実践女子大学, 研究推進機構, 研究員 (70796391)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥3,250,000 (Direct Cost: ¥2,500,000、Indirect Cost: ¥750,000)
Fiscal Year 2022: ¥260,000 (Direct Cost: ¥200,000、Indirect Cost: ¥60,000)
Fiscal Year 2021: ¥650,000 (Direct Cost: ¥500,000、Indirect Cost: ¥150,000)
Fiscal Year 2020: ¥910,000 (Direct Cost: ¥700,000、Indirect Cost: ¥210,000)
Fiscal Year 2019: ¥1,430,000 (Direct Cost: ¥1,100,000、Indirect Cost: ¥330,000)
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Keywords | 草双紙 / 黒本青本 / 赤本 / 菊寿草 / 近世物之本江戸作者部類 / 鱗形屋孫兵衛 / 題簽 / 紙質 / 初期草双紙 / 黄表紙 / 初摺 / 後摺 / 装丁 |
Outline of Research at the Start |
従来、赤本、黒本、青本の順に装丁を順に変化させ、それに伴って質的にも変化・成熟していったという草双紙の文学史的定義を、現存する一次資料を調査することによって検証・評価し、草双紙の性質を捉え直す。草双紙享受の実態を明らかにすることによって、草双紙は草創期既にあらゆる要素を持ち合わせていたこと、時流を摂取する一方で、時代の変化に関係なく刊行され、享受されたものでもあったことを立証する。その上で、草双紙に一貫して通じる性質とは何かを検証し、文学史上の再評価を行う。
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Outline of Annual Research Achievements |
在外資料の調査再開については実施できなかったが、後印本を含めた草双紙の享受の実態を明らかにする上で有効なアプローチ法である本文料紙の紙質分析に取り組むことができ、一定の成果を上げた。 従来、草双紙史の定義は大田南畝『菊寿草』序文や曲亭馬琴『近世物之本江戸作者部類』の言辞を叩き台にし、同時代の作品群を検証することによって形成されてきたが、それらは全て執筆者のフィルターを通した、一定の目論見の下で編集・構成されたものである。これまで、申請者は現存する草双紙の装訂を悉皆調査し、整理することによって、同時代の戯作者による言辞を検証し、草双紙の従来のイメージと実態とを比較対照し、その結果、現状の草双紙の定義は、草双紙の歴史的な変遷を正しく捉えたものとは言えないことを指摘してきた。 現在取り組んでいる高精細デジタル顕微鏡を使用した調査は、従来の装訂を基準にして草双紙を整理する方法の研究成果を支え、さらに、新たな知見を加え、草双紙の享受を探るための確かな判断材料を得られる研究方法である。 年代推定の拠りどころとなる表紙や題簽といった装訂の多くは年を経るにつれて失われる。場合により、例えば古書店が販売する際の都合など、意図的にそれらしく見えるものが補われている可能性さえある。原本調査をすると、装訂の情報から得られる刊行年代が、手に取り調査した際の印象と異なるように感じる資料に遭遇することがある。そのような違和感の意味するところが、例えば、装訂は古いが本文料紙から判断して中身は明治期の後印本のものであるなどと顕微鏡による撮影画像によって証明できる例が既に出てきている。 2022年度は、草双紙の伝本の年代特定をするための紙質整理を完成させるための第一歩として、草創期から黄表紙までの草双紙の本文に用いた料紙が再生紙(漉き返し)であることを立証したことについて所属学会で口頭および論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
社会情勢の影響で、当初希望していた海外機関の調査が実施できていない状況が続いている。また、国内の所蔵機関についても一部再調査をおこなう必要が生じているが、現状実施できていない。2023年度に可能な範囲で調査を実施したい。 一方、申請者が2015年度に提出した博士論文を再整理し、稿を補う作業については進んでおり、初期草双紙の文学史上の再定義や享受について取り上げた自著の刊行計画について進めている。 また、2022年6月に日本近世文学会春季大会で口頭発表し(「初期草双紙の料紙からみえるもの――高精細マイクロスコープによる観察を軸として――」)、翌2023年1月に『近世文藝』117号に論文発表した(「草双紙の本文料紙の紙質―高精細デジタル顕微鏡の観察結果を手掛かりに――」)。
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Strategy for Future Research Activity |
まだ実現できていない国内外の所蔵機関の草双紙調査を遂行する。 その際、ごく簡易な方法でも、紙質を観察し、その結果を一点ずつの資料の評価材料に加えていく予定である。優先して調査を実施したい機関は、ホノルル美術館・関西大学・南山大学である。これらの機関は、まとまった数の初期草双紙コレクションがあるばかりでなく、三田村彦五郎旧蔵本を複数所蔵しているからである。 三田村彦五郎は、宝暦・明和期の草双紙の愛好家の少年で、本の保存状態も良好なものが多く、初摺・後摺の両体裁を所有し、場合により署名のほかに、購入年月日を明記した伝本も存在する。三田村本の装訂・紙質の情報を得ることは、草双紙の正しい整理に非常に有効といえる。
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Report
(4 results)
Research Products
(8 results)