A Social and Cultural Analysis of "Post-Truth" as Epistemology
Project/Area Number |
19K21667
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Research Category |
Grant-in-Aid for Challenging Research (Exploratory)
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Review Section |
Medium-sized Section 4:Geography, cultural anthropology, folklore, and related fields
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
太田 好信 九州大学, 比較社会文化研究院, 特任研究者 (60203808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉山 あかし 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (60222056)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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Project Status |
Granted (Fiscal Year 2022)
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Budget Amount *help |
¥6,110,000 (Direct Cost: ¥4,700,000、Indirect Cost: ¥1,410,000)
Fiscal Year 2021: ¥1,170,000 (Direct Cost: ¥900,000、Indirect Cost: ¥270,000)
Fiscal Year 2020: ¥4,420,000 (Direct Cost: ¥3,400,000、Indirect Cost: ¥1,020,000)
Fiscal Year 2019: ¥520,000 (Direct Cost: ¥400,000、Indirect Cost: ¥120,000)
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Keywords | ポスト真実 / UFOアブダクション経験 / 権威主義的パーソナリティ / 相対主義 / 反知性主義 / アブダクション / 陰謀論 / ネットワーク文化 / 社会科学的認識論 / 権威主義的パーソナリティ論 / 啓蒙の両義性 / 対話 / 社会的ネットワーク / 非合理性 / フィルター・バブル / 権威主義的パーソナリティー / 認識論 / 科学と信仰 |
Outline of Research at the Start |
本研究は、近年メディアにおいてしばしば登場する「ポスト真実」ということばを、政治状況を指すことばではなく、真実と信仰との境界線を交渉することば、すなわち認識論の一つとして捉え直す。そのため、社会科学全般をも巻き込んだラディカルな問題として考える。調査方法としては、統計調査と民族誌(インタビュー)調査の両面から、真実と信仰との境界がいかにして移ろいつつも、ときには一時的に確定するのかを明らかにする。
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Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2019年度に開始した。その後、コロナ禍の影響、ならびに米国における政治状況も急激な悪化などにともない、調査は難航した。米国におけるアンケート調査、ならびにUFOアブダクションを経験した人たちへのインタビューも遅延、実地調査も日本での調査にシフトすることになった。 本年度末、分担者(杉山あかし)はアメリカ合衆国でのアンケート調査を実施し、その結果を現在分析中である。代表者(太田好信)は、大阪で活動中のUFO同好会である「OUC」(大阪UFOサークル)の調査をおこなっている。 「ポスト真実」の現象は、トランプ大統領の退陣とともに消滅するものではないことは当初より明白であった。現在では、知の権威は「キャンセル・カルチャー」によっても批判されている。本研究は「ポスト真実」を政治現象、ポストモダニズムの暴走、相対主義の蔓延、反知性主義、格差がうんだルサンチマンによる分断などと捉え、社会分析の対象とすることだけではなく、1990年代以降、リベラル民主主義の勝利に親和性をもつ思想展開と理解してきた。したがって、その誤謬を正す対象としてよりも、分析理論も絡み取られている思想状況とみなす。 本研究は、挑戦的研究という性格上、新たな方法論を提示するのではなく、研究の方向性を示すことに留まるだろう。たとえば、UFOとの接触を語る人びとがいる。なかには、自己を資本主義経済の批判者として語り、そのような知識を意識したとき、UFOにより「脳がスキャンされた」と語る人もいた。このような人たちの経験を無意味、また別の次元(心理学、社会学など)に還元せずに捉えることは可能なのか。それが困難なら、既存の知の何が障害になっているのか。その障害を、知を開くための契機にすることはできないだろうか。「ポスト真実」は知への挑戦だけではなく、知のあらたな沃野を切り開く契機になるかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究はコロナ禍の影響を受け、研究実施期間延長、ならびに調査地の変更を余儀なくされた。米国への渡航が困難になるだけではなく、2021年1月以降、米国大統領選挙後の混乱によりアンケート調査の実施もままならない状況が起きた。「ポスト真実」は研究対象というだけでなく、研究を実施するためには不可欠な社会秩序すら破壊しかねない勢いをもってしまった。昨年度から本年度にかけて、研究の遅延状況をつくりだした要因である。 以上のような社会変化を考慮し、代表者による実地調査は国内に改めた。対象を、大阪UFOサークル(OUC)に変更した。おりしも、2022年11月から、コロナ禍で中断してきた隔月の会合も開催され、それに参加した。OUCは日本では稀なほど長い伝統を持つサークルであり、1950年代後半からUFOに関心をいだく会員から、最近、UFOとの遭遇建研をもつ若手まで、コミュニティを形成していた。コミュニティとは、社会では語ることができない経験を語り、友と共有できる場である。このような経験の共有をどう捉えることができるのか。 知はコミュニティを対象化し、経験を他の要素に還元してしまう。したがって、構築主義のように、誤謬を暴露することが分析になる。「ポスト真実」は、このような知の権威に対する挑戦である。知の権威が作り出す他我、知の権威に付きまとう影ともいえる。 分担者は、異なった立場から研究を進めている。本年度末に米国におけるアンケーと調査を実施し、2023年1年間をかけて社会分析をおこなう計画だ。その分析は、様ざまな社会的因子との相関関係を考慮し、「ポスト真実」という社会現象の階級、ジェンダー、宗教、人種などによる「濃淡」に迫るだろう。本年度は、代表者の質的調査資料と分担者のアンケート調査との結果を突き合わせ、本研究の結論へと向かう予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、研究の最終年度になる。一方において、分担者はすでに米国におけるアンケート調査の結果を資料として、因子分析をおこなっている。「ポスト真実」という現象を、その社会的広がりを多様な因子との関連から分析をおこなっている。他方において、代表者は本年度も大阪UFOの会合での参与観察などの結果を具体的資料として扱い、「ポスト真実」従来の知との関係を理論的に考察したい。本年度は、分担者と代表者がそれぞれ異なった視点から「」の提起してきた課題について、討論をおこなう期間になろう。その結果を、報告書として提示したい。 もし、「ポスト真実」が知の権威によりつくりだされたとすれば、マイノリティたちをエンパワーしてきた論理もマイノリティを抑圧したい者たちが自己を犠牲者と演出すれば自由に借用できよう。つまり、犠牲者の論理だ。また、権威の否定は、最近では「キャンセル・カルチャー」現象にもみられる。たとえば、2022年1月、カリフォルニア大学バークレー校クローバーホールの名称は変更された。その理由には、この著名な文化人類学・言語学者の仕事が、多様性や包摂という現在の大学の教育方針を反映しないからだという。顕彰されてきた知は再審され、その権威は高等教育にはふさわしくないという。 分担者と代表者とが、2023年の間、意見交換を通して考察したいのは、「ポスト真実」のアフターライフとでもいえる社会的広がりを捉えることである。「ポスト真実」が真実の提示により消滅しないどころか、別の現実があるという。これを相対主義とすれば、知と権威との関係を不問のままだ。「ポスト真実」は、それを否定する知の根拠をも問うている。分担者なら、「ポスト真実」は混沌とした社会がつくりだす欲望だというかもしれない。しかし、そう呼ぶ自らの確信はどこにあるのか。そういえる知の根拠とは何か。本年度中、分担者と代表者との対話を継続される。
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Report
(4 results)
Research Products
(9 results)